2025/10/21
みなし残業が適している企業とは?メリットやデメリット・導入する際の注意点を詳しく解説
新規で外国人を雇用する際に、「みなし残業について把握しておきたい」「みなし残業のメリットやデメリットを知りたい」と思っていませんか?
この記事では、これらの疑問を解消し、外国人雇用におけるみなし残業を簡単に理解できるよう解説します。
具体的な導入メリット・デメリットから、導入時の注意点まで、詳しく説明していきます。ぜひ最後まで読んで、外国人雇用を成功させましょう。
G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の在留資格・特定技能ビザ取得支援、36協定をはじめとする労務管理の整備アドバイスなど企業側の受入支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
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みなし残業(固定残業)とはどのような働き方か?
みなし残業とは、あらかじめ給与の計算根拠となる労働時間に一定時間分の残業時間を含める制度です。固定残業とも呼ばれます。
厚生労働省は2018年1月の職業安定法指針で、「一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金」を「固定残業代」と定義しています。
実際に働いた時間が固定残業時間を下回っても、固定残業代は全額支給されます。逆に、固定残業時間を超えた場合は、超過分に残業代を上乗せして支払う必要があります。
外国人労働者を雇用する場合は、母国における労働慣習との違いを理解してもらうことが重要です。また、残業や給与計算などは労働基準法が密接に関係していますが、労働基準法は国内で働く外国人労働者にも原則適用されます。
就業規則や雇用契約書で、みなし残業に関する規定を明確に記載し、内容について丁寧に説明するよう心がけましょう。
みなし残業(固定残業代)の3つの種類
みなし残業には、主に下記の3つの種類があります。
- ・事業場外労働
- ・専門業務型裁量労働制
- ・企画業務型裁量労働制
外国人労働者を雇用する際にどの種類が適切かは、職種や業務内容によって異なります。それぞれの制度の特徴を理解し、適切な制度を選択することが重要です。
事業場外労働
事業場外労働は、労働時間を正確に把握することが難しい社外での業務が多い職種に適用されます。
企業からの指示や管理が行き届きにくい、労働時間の算定が難しいといった要件を満たす必要があります。外回りの営業職や旅行会社の添乗員、バスガイド、テレワーク・在宅勤務者などが該当しやすいです。
外国人労働者の場合、言葉の壁や文化の違いから、コミュニケーションが不足し、労働時間の管理がより難しくなる可能性があります。
そのため、事業場外労働を適用する場合は、労働時間管理ツールを活用したり、定期的な面談を実施したりするなど、より綿密な管理体制を構築することが重要です。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、高度な専門知識を必要とする業務で、労働時間の配分などを従業員の裁量に任せた方が、業務を効率的に遂行できると認められる場合に適用されます。
新技術や科学系の研究者、情報処理システム関連職、弁護士などの各法曹、公認会計士、テレビやラジオなどのプロデューサー、コピーライターや編集者、デザイナー、インテリアコーディネーター、中小企業診断士、建築士など、厚生労働大臣から指定された19種類の特定専門職が対象です。
労働基準法第38条の3で定められています。外国人労働者の場合、専門的な知識や技能を持つ人材を採用することが多いですが、日本の労働法制度や企業文化に慣れていない場合もあります。裁量労働制の適用にあたっては、労働時間管理に関する研修を実施したり、定期的な面談を通じて労働状況を把握したりするなど、適切なサポート体制を整えることが重要です。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、労働時間の配分や仕事の進め方などを労働者個人に任せることで、より良い成果につながったり、業務の効率化が期待できたりする場合に適用されます。
対象業務は、経営企画や財務・経理、人事・労務、広報、生産、営業領域の調査・計画・企画・分析といった分野に限られ、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務である必要があります。
外国人労働者を企画業務型裁量労働制で雇用する場合、業務内容や責任範囲を明確に定義し、日本の労働法制や企業文化に関する研修を実施するなど、適切なサポートを提供することが重要です。また、定期的な面談を通じて、労働時間や業務の進捗状況を把握し、必要に応じて指導や助言を行うことで、外国人労働者が安心して業務に取り組める環境を整備しましょう。
みなし残業(固定残業代)を導入する4つのメリット
みなし残業を導入することで、企業と従業員の双方にメリットが生じます。主なメリットを4つ紹介します。
- ・残業代の計算が簡素化される(企業側)
- ・人件費の把握が容易になる(企業側)
- ・業務効率が上がりやすい(従業員側)
- ・収入が安定し生活設計が立てやすい(従業員側)
外国人労働者を雇用する際には、これらのメリットを丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。文化や言語の壁があることを忘れずに接することが重要です。
残業代の計算が簡素化される(企業側)
企業がみなし残業を導入すると、規定時間分までの残業代について計算が不要になります。例えば、月15時間の固定残業を給与に含む規定で働く従業員が残業した場合、残業時間が15時間以内であれば、支払う給与の金額は変わりません。
毎月の残業代の計算や、残業代の変動にともなう社会保険や所得税の確認も不要になります。これにより、企業は人事労務コストを削減できます。特に外国人労働者を雇用する場合、給与計算や社会保険手続きが複雑になる場合もあるため、みなし残業の導入は、事務処理の簡素化に大きく貢献します。また、外国人労働者にとっても、給与計算方法がシンプルになることで、給与に対する理解度が深まり、安心して働くことができます。
人件費の把握が容易になる(企業側)
企業がみなし残業を導入すると、残業代が固定されるため、給与額の変動を抑えられます。支出における人件費を計算しやすくなるため、企業は支出管理や事業予測を立てやすくなります。
ただし、固定残業時間の上限を超えて残業した場合は、その分の割増賃金を従業員に支払う必要があるため、注意が必要です。
外国人労働者を雇用する場合、労働時間管理が適切に行われていないと、予期せぬ残業代が発生し、人件費が膨らむ可能性があります。そのため、労働時間管理システムを導入したり、定期的な面談で労働時間について確認したりするなど、適切な管理体制を構築することが重要です。
業務効率が上がりやすい(従業員側)
みなし残業を導入すると、残業の有無にかかわらず、従業員に支給される給与額はほぼ一定になります。残業をしなくても一定の残業代を受け取れるため、早く仕事を終わらせようと、業務へのモチベーションが上がり、効率的な働き方につながる可能性があります。
長時間労働の抑制にもつながりやすく、従業員の働きやすい環境を作りやすいです。外国人労働者にとっても、業務効率を上げることで、早く仕事を終え、自分の時間を持つことができます。
また、業務効率の向上は、企業にとってもメリットとなるため、外国人労働者と企業がwin-winの関係を築くことができます。
収入が安定し生活設計が立てやすい(従業員側)
みなし残業を導入すると、従業員が受け取れる給与が一定になるため、生活設計が立てやすくなります。毎月決まった収入を得られるため、生活の見通しを立てやすく、収入の心配を減らせます。求職者に対しても収入の安定性をアピールしやすいです。
特に外国人労働者にとっては、来日したばかりで生活基盤が不安定な場合が多いです。安定した収入を得られることは、生活の安心感につながり、日本で安心して働く上で重要な要素となります。
みなし残業(固定残業代)を導入する3つのデメリット
みなし残業には、メリットだけでなくデメリットもあります。デメリットを理解した上で導入を検討しましょう。
- ・人件費が増加する可能性がある
- ・サービス残業につながる可能性がある
- ・長時間労働を助長するおそれがある
外国人労働者を雇用する場合、これらのデメリットについても丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
人件費が増加する可能性がある
従業員の残業時間が固定残業時間に満たなくても、一定の残業代を支払わなければいけないため、あまり残業が発生しない企業では、かえって人件費が増加しやすいです。外国人労働者の場合、日本の労働法や慣習に慣れていないことから、残業時間が想定よりも少なくなる可能性も考慮に入れる必要があります。導入前に、綿密なシミュレーションを行い、人件費への影響をしっかりと見極めることが大切です。
サービス残業につながる可能性がある
従業員がみなし残業の制度に対する理解不足の場合、固定残業時間以上に働いても残業代が払われないと誤解し、サービス残業につながる可能性があります。
企業は従業員に対してみなし残業に対する正しい認識を周知する必要があります。みなし残業でも、一定時間の残業時間を超えると、追加で残業代は支払われます。特に外国人労働者の場合、言語の壁や文化の違いから、制度の理解が難しい場合もあります。
そのため、就業規則や雇用契約書にみなし残業の規定を分かりやすく明記するだけでなく、母国語での説明や研修なども検討し、確実に理解してもらう努力が重要です。
長時間労働を助長するおそれがある
企業側の認識が誤っていると、「一定時間内は残業をさせても問題ない」「一定の残業代をもらっているのだから、定時退社させるのはむしろおかしい」という誤解が生まれやすいです。
みなし残業制度は、定められた残業時間の労働を一律に推奨するような制度ではありません。「従業員は残業時間の上限まで働かせて当たり前」という風潮にならないように、管理者の意識改革や適切な勤怠管理が必要です。
外国人労働者の場合、長時間労働による疲労やストレスが、健康問題や文化の違いによる摩擦を引き起こす可能性も高まります。適切な労働時間管理と、外国人労働者の心身両面の健康に配慮した労務管理が重要です。
みなし残業(固定残業代)を導入する際の3つのポイント
みなし残業を正しく運用するために、導入時に注意すべきポイントを3つ説明します。
- ・みなし残業の制度を従業員に理解してもらう
- ・従業員の労働時間を正しく把握する
- ・みなし残業時間を超えて労働した時間分の残業代は別途支払う
外国人労働者を雇用する場合は、これらのポイントを特に注意深く確認し、適切な運用を心がけることが重要です。
みなし残業の制度を従業員に理解してもらう
みなし残業について、従業員がどのような給与形態なのかを理解できるように、就業規則にルールを定めて明示する必要があります。
「給与は固定残業の30時間分を含む」と記載するだけでは、内容として不十分です。みなし残業について記載する際は、月々の給与に含まれるみなし残業の時間数、みなし残業分やみなし残業分を除く基本給などの計算方法、規定時間を超えた残業分の対応などを記載する必要があります。
管理者の誤った認識によってサービス残業が行われないように周知することも大切です。外国人労働者の場合、言語の壁があるため、就業規則を母国語で用意したり、口頭で丁寧に説明したりするなどの工夫が必要でしょう。また、文化的な背景の違いから、日本の労働法制や企業文化に馴染めない場合もあるため、研修などを実施し、理解を深めてもらう努力も重要です。
従業員の労働時間を正しく把握する
従業員の長時間労働を防ぐため、労働時間を正しく把握することが必要です。固定時間以上に働いているにもかかわらず、残業申請していない場合は申請するように促しましょう。
また、勤怠管理しやすい体制作りも大切です。外国人労働者の場合、労働時間管理に対する意識が低い場合や、残業申請の方法が分からない場合もあります。
そのため、労働時間管理ツールを導入したり、定期的な面談で労働時間について確認したりするなど、積極的に労働時間を把握する工夫が必要です。
みなし残業時間を超えて労働した時間分の残業代は別途支払う
みなし残業では、規定時間を超えた残業に対して残業代を支払う必要があります。管理者や従業員にも計算方法を周知し、みなし残業に対する正しい知識をもってもらいましょう。
ただし、法律に定められた割増率に反してはいけません。外国人労働者の場合、残業代の計算方法や支払い方法について、誤解が生じやすいです。
就業規則や雇用契約書に、固定残業時間を超えた場合の残業代の計算方法を明記し、外国人労働者にも理解できるように説明する必要があります。
みなし残業(固定残業代)を導入する際の4つの注意点
みなし残業を導入する際には、下記の4つの点に注意しましょう。
- ・基本給は最低賃金を下回らない
- ・残業代が発生した場合は法定賃金割増率を下回らない
- ・みなし残業時間は45時間を超えない
- ・雇用契約書や就業規則などに必要事項を明記する
- ・給与明細に残業時間を明記する
外国人労働者を雇用する場合は、これらの注意点に加え、文化や言語の違いに配慮した対応が必要です。
基本給は最低賃金を下回らない
最低賃金とは、都道府県ごとに設定されている1時間あたりの賃金です。
アルバイトやパートタイムの従業員だけでなく、正規雇用の従業員に対しても、最低賃金を下回る基本給を設定することはできません。
基本給を下げて、その分を固定残業代で補う形で金額を決めると、最低賃金法に抵触する恐れがあります。外国人労働者の場合も、同様に最低賃金を下回ってはいけません。国籍を問わず、全ての労働者に最低賃金が保障されていることを明確に伝えましょう。
残業代が発生した場合は法定賃金割増率を下回らない
固定残業時間を超えて残業が発生した場合、その分の残業代は、法定賃金割増率を下回らないように支払う必要があります。
法定賃金割増率は、労働基準法で定められており、時間外労働は25%以上、休日労働は35%以上、深夜労働は50%以上の割増賃金を支払う必要があります。外国人労働者の場合も、同様に法定賃金割増率を遵守する必要があります。
みなし残業時間は45時間を超えない
企業が従業員に45時間を超える残業をさせるには、労働組合や労働者の過半数代表者などと特別条項付きの36協定を締結する必要があります。
36協定とは、法律で決められた労働時間を超えて残業する場合に従業員と会社の間で結ぶ取り決めです。45時間超の残業は従業員の健康被害の要因になり、また長時間労働前提の契約は公序良俗の観点からも問題があります。
外国人労働者の場合も、みなし残業時間を含め、法定労働時間を超える労働をさせる場合には、36協定の締結が必要です。
雇用契約書や就業規則などに必要事項を明記する
みなし残業制度を導入した給与制度は、雇用契約書や就業規則などに記載して、従業員に周知する必要があります。
「給与は固定残業の30時間分を含む」と記載するだけでは、内容として不十分です。みなし残業について記載する際は、月々の給与に含まれるみなし残業の時間数、みなし残業分やみなし残業分を除く基本給などの計算方法、規定時間を超えた残業分の対応などを記載する必要があります。
外国人労働者の場合、雇用契約書や就業規則を母国語で作成したり、口頭で丁寧に説明したりするなど、内容を確実に理解してもらえるよう配慮が必要です。
給与明細に残業時間を明記する
みなし残業制度の運用においては、給与明細に固定残業代の金額やそれを超えて残業した時間を記載する義務があります。
勤怠情報がないと、給与計算の根拠がわからなくなってしまうため、固定残業制であったとしても、実際の残業時間が何時間だったのかについては記載する必要があります。
外国人労働者に対しても、同様に給与明細に残業時間を明記する必要があります。給与明細の内容について、疑問点があれば質問しやすい環境を作ることも重要です。
まとめ
この記事では、みなし残業の定義、種類、メリット・デメリット、導入時のポイントと注意点について解説しました。
みなし残業は、正しく運用すれば、企業と従業員の双方にとってメリットのある制度です。しかし、運用を誤ると、サービス残業や長時間労働などの問題を引き起こす可能性もあります。
導入を検討する際は、この記事で紹介した内容を参考に、メリット・デメリットを比較検討し、自社にとって適切かどうかを判断しましょう。特に外国人労働者を雇用する場合は、文化や言語の壁を乗り越え、相互理解を深めるためのコミュニケーションを積極的に図ることが重要です。
G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の在留資格・特定技能ビザ取得支援、36協定、勤怠管理、給与計算をはじめとする労務管理の整備アドバイスなど企業側の受入支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
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