2026/01/28

人手不足時代の飲食店経営──帝国データバンク調査から考える「特定技能」という選択


「アルバイトは集まる。でも店を任せられる人がいない」

帝国データバンク調査から読み解く、飲食店人材戦略の分岐点

「アルバイトは以前より集まるようになった。でも、店を任せられる人がいない。」
多くの飲食店経営者が、いま同じ悩みを抱えています。人手不足という言葉自体は珍しくなくなりましたが、その“中身”はここ数年で大きく変わってきました。

実際、帝国データバンクが発表した最新の調査では、非正社員の人手不足は改善傾向にある一方で、正社員の不足は依然として半数を超える水準で高止まりしています。つまり、現場を「回すための人手」は何とか確保できても、店舗を「支え続ける人材」はますます見つかりにくくなっているのです。

本記事では、帝国データバンクの調査結果をもとに、飲食店の人手不足が今どの段階にあるのかを整理したうえで、経営を安定させるためにこれから取るべき人材戦略、そしてその現実的な選択肢として注目される「特定技能」について考えていきます。

人手不足は「改善」ではなく「質的転換」の段階?

帝国データバンクが2025年10月に公表した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、正社員の人手不足を感じている企業は51.6%に達し、10月としては4年連続で半数を超えました。前年同月からの改善幅はわずか0.1ポイントにとどまり、人手不足が一時的な現象ではなく、長期的に固定化していることがうかがえます。

一方で、非正社員の人手不足割合は28.3%まで低下しています。飲食店に限って見ると、非正社員不足は2023年には82.0%と極めて高い水準にありましたが、2025年10月には53.4%まで大きく改善しました。帝国データバンクはその背景として、DXの進展やスポットワークの普及による生産性向上を挙げています。

しかし同時に、調査では若手人材の大手企業・都市部への流出や、スキルがマッチした正社員を確保できない企業の増加も指摘されています。数字上は「改善」に見えても、実態は人手不足の性質が変わっただけと言えるでしょう。

数字の裏で進む、人件費率の上昇という現実

この“質的転換”は、飲食店経営により直接的な形で影響を及ぼしています。それが人件費率の上昇です。

人材を確保するために時給を引き上げ、社員の待遇改善を行えば、売上が横ばいでも人件費率は上がります。コロナ前、飲食店の人件費率は売上の25〜30%程度が一つの目安とされていましたが、現在では30%台後半、店舗によっては40%近くまで上昇しているケースも珍しくありません。

正社員不足が続く中、少人数で店舗を回す体制になれば、残業や役職手当が増え、人件費は構造的に下がりにくくなります。帝国データバンクが示す「正社員不足の高止まり」は、単なる採用難ではなく、固定費の上昇を通じて利益を直接圧迫する経営問題として捉える必要があります。

価格転嫁できる店・できない店で広がる格差とは?

さらに重要なのは、この人件費上昇を価格に転嫁できているかどうかで、飲食店の経営状況に大きな差が生まれている点です。

予約制の飲食店や専門料理店、インバウンド需要を取り込めている店舗などは、体験価値や独自性が評価されやすく、比較的価格転嫁が進んでいます。「多少高くても選ばれる理由」を持つ業態は、人件費や原価の上昇を価格に反映しやすいのです。

一方で、定食業態や居酒屋、日常使いの外食など、価格感度の高い業態では、値上げによる客離れのリスクが大きく、人件費が上がっても価格に転嫁できないケースが多く見られます。その結果、売上は維持できていても利益が出ず、営業時間短縮や人員削減でしのがざるを得ない状況に陥ります。

帝国データバンクが報告する「人手不足倒産の増加」は、こうした構造的な問題の延長線上にあります。

飲食店経営に突きつけられている本当の課題は?

ここまでの分析から見えてくるのは、飲食店が直面している課題は単純な「人手不足」ではないという事実です。

本質は、店舗を“回す人手”ではなく、“支え続ける人材”を確保できない構造にあります。アルバイトの採用環境は一定程度落ち着きました。シフトが埋まらないという最悪の状況は減っています。しかしその一方で、教育を任せられる人材、売上や原価を管理できる人材、店舗運営を一任できる人材は確実に不足しています。

その結果、多くの店舗では次のような状態が起きています。

  • ・正社員が1人辞めただけで営業体制が崩れる
  • ・店長が現場に張り付き、育成や改善に時間を割けない
  • ・繁忙期の機会損失が常態化する
  • ・新規出店や業態転換に踏み出せない

これは単なる採用難ではありません。

「成長が止まる構造」に入りつつあるサインです。帝国データバンクの調査で正社員不足が高止まりしているという事実は、今後もこの状態が続く前提で経営を設計する必要があることを意味しています。人材が不足すれば売上は伸びず、売上が伸びなければ待遇改善もできない。この循環が固定化すれば、経営は守りに入らざるを得ません。さらに深刻なのは、若手日本人を正社員として採用し、育成し、定着させることが年々難しくなっている点です。従来と同じ採用手法だけに頼ることは、もはや現実的ではありません。

だからこそ今、問われているのは次の一点です。

「誰を中核人材として育てるのか」を、戦略として設計できているか。

3年後、店舗を任せられる人材はいるでしょうか。経営者が現場を離れても、組織は自走できるでしょうか。人手不足時代に本当に問われているのは、「採用力」ではなく、人材戦略そのものなのです。

人手不足構造チェックリスト

では、あなたの店舗は今どの段階にあるのでしょうか。
以下のチェックリストで現状を整理してみてください。

① 人材構造の現状確認

□ 正社員が1名退職した場合、営業に支障が出る
□ 店長・料理長クラスが実質ワンオペ状態になっている
□ アルバイトの教育を社員が兼務している
□ 採用しても1年以内に辞めるケースが多い
□ 求人広告費が年々増えている

3つ以上当てはまる場合、構造的な人材不足の可能性

② 人件費率の健全性チェック

□ 人件費率が30%を超えている
□ 売上は維持しているが利益が減っている
□ 時給アップでしか人材確保できない
□ 残業時間が慢性化している

価格転嫁できていない場合、今後さらに圧迫リスク大

③ 将来リスクチェック(3年視点)

□ 若手正社員の採用が年々難しくなっている
□ 店舗展開を止めている理由が「人がいない」
□ 店長候補が社内にいない
□ 事業承継の見通しが立っていない

1つでも該当すれば、戦略的人材設計が必要

 

3つ以上チェックが入った場合、今の人材戦略は“対症療法”にとどまっている可能性があります。人手不足が続く前提で、構造的に人材を設計する段階に来ています。

解決策としての「特定技能」という現実的な選択肢

こうした構造的な課題に対し、有力な選択肢となるのが特定技能外国人材の活用です。特定技能は外食業が正式な対象分野であり、フルタイムで安定的に就労できる制度です。

短期的な人手不足を埋めるためだけでなく、将来的には店舗運営の中核を担う人材として育成することも可能です。特定技能人材を計画的に受け入れることで、「辞めるたびに採用を繰り返す経営」から、「人に投資し、定着させる経営」へと転換することができます。

特定技能導入準備チェックリスト

制度理解

□ 特定技能1号の在留期間を理解している
□ 外食業が対象分野であることを知っている
□ 受入れ人数枠の考え方を理解している

受入体制

□ 生活サポート体制を準備できる
□ 日本語教育支援を検討している
□ 既存スタッフへの説明ができている

定着戦略

□ キャリアパスを示せる
□ 昇給・評価制度を整備している
□ 将来的なリーダー育成を想定している

特定技能の導入から定着まで、弊社が伴走します!

もっとも、特定技能は導入すれば自動的に成功する制度ではありません。生活面の不安や職場への適応、将来のキャリアが描けないままでは、早期離職につながるリスクもあります。

弊社では、飲食店向けに特定技能外国人材の採用支援から在留資格手続き、就労後の定着支援までを一貫してサポートしています。人件費が上がり続ける時代だからこそ、「誰に投資するのか」を見極めることが重要です。

帝国データバンクの調査が示す通り、人手不足は今後も続く前提で経営を考える必要があります。だからこそ今、特定技能を含めた新しい人材戦略に踏み出すことが、飲食店経営の将来を左右する分岐点になるのではないでしょうか。

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柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。
柴田彩
大学ではインターナショナルビジネスとマーケティングを専攻しました。多文化な環境で暮らす中で、「言葉で伝えること」の力と難しさ、そして面白さを日々実感してきました。 このサイトでは、日本の飲食業界における外国人材の受け入れや、「特定技能」制度に関する情報を中心に発信しています。制度や手続きといった堅いテーマも、できるだけわかりやすくお届けできたらと思っています。誰かの「なるほど」「知らなかった!」という気づきにつながる、そんな記事を目指しています。