2026/06/22
「世界の山ちゃん」創業者を継承した、奥様元専業主婦が切り拓く世界とは
さる6月10日、東京駅八重洲地下街(ヤエチカ)に「世界の山ちゃん」がオープンした。「世界の山ちゃん」とは、名古屋発祥で、二度揚げした手羽先にコショウの辛さが特長「幻のコショウ」をまぶした「幻の手羽先」をメインの商品にした居酒屋で、客単価3000円程度。ヤエチカ店は同ブランドの88店目となる。同店を経営するのは株式会社エスワイフード(本社/愛知県名古屋市、代表/山本久美)である。
創業者は山本重雄氏で、1981年6月「串かつ・やきとり やまちゃん」として、名古屋・新栄にオープンした。現在の店名は、従業員が電話対応で「世界の山ちゃんです」と発したことから、「それは面白い」と店名に納まったという。
また、「世界の山ちゃん」には「鳥男」というキャラクターが存在する。これは山本氏をイメージしたイラストで、可愛いとは言えないが記憶に残る。山本氏は生前「立派な変人たれ」という言葉を信条とした。先の従業員が電話口で発した「世界の山ちゃん」も含めて、エスワイフードという会社の中には、「笑い」や「変化」を尊ぶ文化が存在している。
その山本氏は2016年8月に急逝。その後継となったのは、山本氏の奥様、当時3人の子供を育てていた専業主婦の久美氏であった。アイキャッチの人物が久美氏で、イラストが「鳥男」である。久美氏が代表となってからヤエチカ店がオープンするまで、この間コロナ禍があった。久美氏は、どのように会社の舵を取り、成長させていったのであろうか。
入りやすい店づくりにしてファミリーも獲得
ちなみに、久美氏は元アスリートであり先代と結婚する前の10年間、小学校の教員を務めた。バスケットを小学校6年生から始めて、中学、高校、大学とキャプテンとしてチームを率いた。中学時代には全国大会優勝を経験している。小学校の教員時代にはバスケットのクラブチームのコーチを務めた。このような久美氏の経験が、創業者を引き継いだ久美氏の会社運営に活かされたようだ。
久美氏は果敢に出店を広げて行く。会社を引き継いでから3年後の2019年8月期決算では、売上高81億円と過去最高を記録した。
その後、コロナ禍となる。「世界の山ちゃん」はディナー型の業態であるために営業できない期間があり、業績が一時期の9割減になったこともあった。
その渦中にあって、久美氏は業容の多角化とカスタマージャーニー(自社の商品を購入するペルソナを設定して、彼らが購入するシナリオを描く)を取り入れた戦略を進めて行く。具体的には、惣菜店やフレンチトースト店の展開、ラーメン店との融合、そして外販、移動販売車などを手掛けた。
これまで取り組んできた回想録として、久美氏はこのように語る。
「会長(創業者の山本重雄氏のこと)は「『幻の手羽先』は門外不出」と言っていました。つまり、店の中でしか食べられない、ということ。私は店の外で『幻の手羽先』を販売すると、店にいらっしゃるお客様とは別のお客様がお買い求めなさる、と考えたのですね。これには、ほかの幹部たちもなかなか了解をしてくれなかった。でも外販を始めてから、店の売上には全く影響がなく、『幻の手羽先』が外販として売上をつくっていきました」
「次に、店舗づくりを『ザ・居酒屋』というものから、どのような方でも気軽に店を利用していただけるように、少しずつ変えてきています。そこで、ご家族連れのお客様が増えてきました。そのお子様の場合は、辛いものを食べることが出来ませんね。ですから『辛くない幻の手羽先もお出しできますよ』とお知らせするようにしていたのでが、お客様がそれを見逃してしまう、ということも多々ありました。そこで、メニューブックの中の『幻の手羽先』の下に、『幻のコショウ』の辛さを『無し』『少なめ』『基本』『多め』4種類の中から選べるような表示をしています」

「幻の手羽先」は創業以来「世界の山ちゃん」を象徴するメイン商品。画像は「5人前25本」3300円(税込)
「移動販売車」によってコアなファンが誕生
「移動販売車」の試みでは、このような動向もあった。
「これは、弊社の催事部門の担当者から「やってみたい」という提案があったのですね。会長はかねて『店がうまくいっているのに、わざわざ移動販売車を動かして、行った先でどれほどの需要があるのかが分からない。維持費もかかる』と捉えていました。でも『やってみたい』というから、『やってみましょう』と」
「最初は、会長が言っていたように、出店場所を探すことが大変でした。『じゃあ、宣伝カーとして町中を走ったらどうか』と。そこで担当者が、そんなことを続けているうちに『世界の山ちゃんの移動販売車』のことが知られるようになり、引っ張りだこになりました。名古屋近郊だけではなく、日本全国どこにでも行きます。いまでは、移動販売車をご用命いただくためには3カ月前に予約が必要、という状況になっています。
「移動販売車では『幻のチューリップ』という商品を、移動販売車限定で販売しています(ほか、セントレア店でも販売)。この商品のファンの方が、『〇〇で、幻のチューリップを食べた』ということをSNSで発信してくださったりしています」
これらの歩みを整理すると、既存の売り方のチャネルを開拓して顧客層を拡大。従業員からの提案を受け止めて支えていく。このような会社運営が「世界の山ちゃん」のブランド力を発揮し、社内のチームワークをより強くしていったようだ。

ヤエチカ店の店頭。店頭には「世界の山ちゃん」の魅力を伝えるあらゆる情報を展示
「ヤエチカ店」で知名度アップ図り、市場開拓へ
また、「世界の山ちゃん」では地元名古屋の飲食企業とのコラボを盛んに行っている。今回のヤエチカ店では、名古屋の味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」とコラボを行い「幻の味噌煮込みうどん」1800円(税込)を同店限定でラインアップ。これは、すべての食材を名古屋から取り寄せてつくる伝統の味噌煮込みうどんに、「幻の手羽先」を使用し、「幻のコショウ」を振りかけて提供するもの。
シンプルな客席構成が、ランチ、昼飲み、居酒屋利用と、あらゆる需要にカジュアルに応える
直近では期間限定(3月3日~4月26日)で、名古屋が本拠地の株式会社ブルームダイニングサービスの「がブリチキン。」とのコラボ「世界のがブちゃん」を行った。これは「がブリチキン。」名物のサクふわジューシーなからあげに、「世界の山ちゃん」の「幻のコショウ」をまとわせたメニューである。
また、大手菓子のメーカー、コンビニでも「鳥男」のキャラクターはじめ「幻の手羽先」「幻のコショウ」の商品イメージを活用したコラボが展開されている。エスワイフードにとっては、大きな宣伝効果をもたらしている。これについて久美氏はこう語る。
名古屋の味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」とコラボを行い「幻の味噌煮込みうどん」1800円(税込)
「これらは、先方からお声掛けをいただいて、弊社が監修する、という形ですね。弊社の特徴は、『幻の手羽先』『幻のコショウ』という唯一無二の商品と、創業者の会長をイメージした「鳥男」というキャラクターが存在していることです。これがコンビニさんのキャンペーンに活用され、パッケージについた商品がスーパーさんの棚に並ぶということ。これは『世界の山ちゃん』を知っていただく絶好の機会であり、『世界の山ちゃん』に行ってみたいという動機も生み出していることでしょう」
さて、今回のヤエチカ店のオープンで期するものとはどのようなことか。
「それはまず、『世界の山ちゃん』の知名度アップです。この業態は夜型営業が中心であったために東京ではあまり知られていません。ヤエチカは旅行や観光の方々、オフィスワーカーの方々とか、いろんなお客様がいらっしゃいます。ランチ営業もできて、昼飲みにも対応できます。また、ヤエチカには全国の方々がいらっしゃいますから、ここで『世界の山ちゃん』が地方の方々に知られることによって、全国の主要都市に出店する可能性が広がります」
久美氏が「世界の山ちゃん」の指揮を執るようになり10年が経過した。ヤエチカから、新たな成長のきっかけを切り拓く意欲が感じられた。
店舗情報
店舗名 / 会社名 |
世界の山ちゃん/株式会社エスワイフード |
|---|---|
業態 |
居酒屋 |
最寄駅 |
東京駅八重洲南口 |
アクセス |
徒歩1分 |
住所 |
〒104-0028 東京都中央区八重洲2-1 八重洲地下街 南1号 |
営業時間 |
|
定休日 |
なし |
電話番号 |
03-6262-3415 |
公式サイト |
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