2025/10/21
就業規則で含めるべき賃金規定(給与規則)とは? トラブル回避するための注意点から作成手順を解説
• 就業規則の項目に賃金規定を含めるべきか知りたい
• 賃金規定で発生しやすいトラブルを回避したい
就業規則に賃金規定を含めることは、労使トラブルの予防に不可欠です。
この記事では、就業規則における賃金規定について、規定の内容、作成手順、トラブル回避のための注意点などを解説します。
賃金規定に含めるべき項目や、法律で定められた賃金支払いの原則、具体的な作成手順などを知りたい方に向けて、就業規則の作成・運用に役立つ情報を提供します。
特に、飲食店経営や外国人雇用を考えている方は、文化や言語の異なる従業員との相互理解を深めるためにも、賃金規定を明確に定めることが重要です。
G-FACTORY株式会社では、飲食業界の人材不足を解消するため外国人人材の採用支援から就労者の在留資格・特定技能ビザ取得支援、36協定、賃金規定などの規定類をはじめとする労務管理の整備アドバイスなど企業側の受入支援まで外国人人材の採用サポートを一気通貫で行っています。
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就業規則に含める賃金規定(給与規則)
就業規則に含めるべき賃金規定には、絶対的記載事項と相対的記載事項の2種類があります。絶対的記載事項は必ず記載する義務のある項目、相対的記載事項は会社で制度を設けている場合に、その内容を就業規則に記載しなければならない項目です。これらの事項を理解し、適切に就業規則を作成することで、従業員との信頼関係を構築し、スムーズな会社運営を実現できるでしょう。
絶対的記載事項
以下の事項を就業規則に必ず定めなければなりません。これらは、労働条件の根幹を成す部分であり、明確な規定が不可欠です。曖昧な表現は避け、具体的な内容を記載することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
• 賃金の決定方法:能力給、成果給、職務給など、どのような基準で賃金を決定するのかを明確に定めます。
• 賃金の計算方法:時給、日給、月給、年俸など、賃金の計算方法を具体的に記載します。残業代や深夜労働の割増賃金の計算方法についても明記する必要があります。
• 賃金の支払い方法:現金手渡し、銀行振込など、賃金の支払い方法を具体的に定めます。振込の場合は、振込日や振込手数料の負担についても明記しましょう。
• 賃金の締め切り日:毎月の賃金の締め切り日を明確に定めます。
• 賃金の支払い時期:毎月の賃金支払日、または支払期間を明確に定めます。
• 昇給に関する事項:昇給の有無、昇給の時期、昇給額の決定方法など、昇給に関する規定を定めます。定期昇給がない場合は、その旨を明記する必要があります。
これらの項目が就業規則に記載されていない場合、または記載内容が不十分な場合は、30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。(参考:労働基準法第89条)
相対的記載事項
会社が給与に関する制度を設けている場合、就業規則には以下の事項のうち、設けているものを必ず記載しなければなりません。これらの事項は、会社独自の制度を反映するものであり、従業員にとって重要な情報となります。
• 退職金制度に関する事項:退職金の支給要件、計算方法、支払い方法などを具体的に定めます。
• 賞与など臨時の賃金に関する事項:賞与の支給時期、支給額の決定方法、支給条件などを具体的に定めます。
• 最低賃金に関する事項:最低賃金の適用を受ける従業員がいる場合は、適用される最低賃金額と、その計算方法を明記する必要があります。
• 従業員の費用負担に関する事項:制服や作業服、業務に必要な道具などの費用を従業員が負担する場合、その範囲と負担方法を明確に定める必要があります。
• 制裁規定の制限に関する事項:減給などの制裁を行う場合、その上限額や減給事由を明確に定める必要があります。
これらの項目は、会社が制度を設けている場合にのみ記載義務が発生します。制度を設けていない場合は、記載する必要はありません。
就業規則における賃金規定(給与規則)の取り決め・変更時のトラブルを回避するため注意点
賃金規定の取り決めや変更時には、トラブルが発生しやすいポイントがあります。トラブルを未然に防ぐために、以下の注意点を確認しておきましょう。これらの注意点を理解しておくことで、従業員との不要なトラブルを回避し、良好な関係を維持することができます。
賃金から天引きする項目を記載する
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賃金から税金や社会保険料などを控除する場合、就業規則に必ず記載しておきましょう。労働基準法では、賃金は全額支払わなければならないという原則があります。控除できる項目は法律で定められており、勝手に控除することはできません。
税金や社会保険料以外にも、法令で認められた範囲で、組合費や財産形成貯蓄などの控除が可能です。ただし、従業員の同意を得ずに控除することはできません。
賃金の計算方法は明確に記載する
賃金の計算方法は、明確に記載しておかないと後々トラブルに発展する可能性があります。計算方法は、時給制、日給制、月給制、年俸制など、様々な種類があります。就業規則には、どの計算方法を採用しているかを明記し、具体的な算出方法についても詳細に記載しておくことが重要です。
例えば、時給制の場合は、時間単価、残業代の計算方法、深夜労働の割増賃金の計算方法などを明記します。月給制の場合は、基本給、諸手当、賞与の有無、通勤手当の支給条件などを明記します。
雇用形態の違いを明確に明記する
雇用形態ごとに異なる賃金形態を定める場合は、雇用形態の違いを明確に記載しましょう。正社員、パートタイマー、契約社員など、異なる雇用形態ごとに賃金条件を明確にすることで、誤解やトラブルを防ぐことができます。
「労働時間が○時間以上かつ出勤日数が○割を下回る場合は短時間労働者として取り扱う」のように、具体的な基準を明示することも重要です。また、試用期間中の賃金や、研修期間中の賃金についても、明確に記載しておきましょう。
賃金支払いの5原則を満たすよう記載する
賃金支払いの5原則は労働基準法第24条に定められています。具体的な項目は下記の5つです。就業規則の賃金規定は、これらの原則を満たしている必要があります。賃金支払いの5原則を遵守することは、従業員の権利を守り、健全な労使関係を築く上で非常に重要です。
1. 通貨払いの原則:賃金は現金で支払わなければなりません。ただし、労働者が合意する場合は、本人名義の銀行口座への振込も認められます。この原則は、労働者が自由に賃金を使用できるようにするためのものであり、商品券や物品などで支払うことは原則として禁止されています。
2. 直接支払いの原則:賃金は労働者本人に直接支払う必要があります。代理人への支払いは禁止されています。未成年者であっても、親権者などへの支払いは認められません。
3. 全額払いの原則:労働者が受け取るべき賃金は全額支払われなければならず、社会保険料や税金以外を一方的に差し引くことはできません。ただし、労働組合費や、従業員の同意を得た上での控除は認められています。
4. 毎月1回以上の支払いの原則:賃金は最低でも毎月1回支払う必要があります。年俸制の場合でも、年額を12分割して毎月支払う必要があります。
5. 定期日払いの原則:賃金支払いの日付は一定の期日を定める必要があります。「毎月25日払い」などのように、具体的な日付を定めて定期的に支払いを行う必要があります。
労働基準監督署への届出する
賃金規程を作成または変更する際には、速やかに労働基準監督署に届け出る必要があります。提出書類には、作成した賃金規程の他に、労働者代表から意見を聴取した結果をまとめた「意見書」が必要です。
届出を怠ると、労働基準法違反となり、罰則が科される可能性があります。届出は、持参または郵送で行うことができます。郵送の場合は、配達証明付きの書留郵便で送付することが推奨されます。
作成した賃金規定は従業員へ十分に周知する
作成した賃金規定は、従業員に十分に周知する必要があります。賃金は従業員の生活に直結する重要な事項であるため、変更内容について従業員に対して詳細に説明し、理解と納得を得ることが重要です。
特に、賃金が減額されるなど、不利益な変更を行う場合は、労働者や労働組合との協議を通じて合意形成を図る努力が必要です。
周知方法は、就業規則を従業員がいつでも閲覧できる場所に備え付ける、従業員全員に書面を配布する、社内ネットワークを通じて電子データで配布するなど、様々な方法があります。重要なのは、すべての従業員が確実に内容を理解できるようにすることです。
就業規則における賃金規定(給与規定)作成・変更の流れ
この章では、就業規則における賃金規定の作成・変更の手順を解説します。それぞれのステップを丁寧に確認し、適切な手順で賃金規定を作成・変更しましょう。
適切な手順を踏むことで、法令遵守を徹底し、従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。
賃金に関する草案の取り決め
まずは草案を作成し、全体の方針を定めます。賃金の決定方法、計算方法、支払い方法、締め切り日、支払い時期、昇給に関する事項など、就業規則に盛り込むべき項目について、具体的な内容を検討します。
基本給や各種手当の金額、賞与の有無や支給基準なども、この段階で決定します。基本給と残業代の締め日が異なる場合は、その旨も明記する必要があります。
従業員の意見も聞く
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従業員から意見を聴くことは、使用者側の義務です。従業員の過半数で組織する労働組合、または労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者に意見を聴き、意見書を作成してもらいます。
意見聴取の際には、草案の内容を丁寧に説明し、質問や意見に真摯に耳を傾けることが大切です。従業員から寄せられた意見は、必ずしもすべて反映する必要はありませんが、真摯に検討し、可能な範囲で取り入れることで、従業員の納得感とモチベーション向上に繋がるでしょう。
給与規定を労働基準監督署へ提出
従業員からの意見聴取後、必要に応じて草案を修正し、最終的な賃金規定を確定します。確定した賃金規定は、就業規則と共に、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
提出書類は、就業規則届、意見書、賃金規定の3点です。それぞれ2部ずつ用意し、1部は受領印を押してもらって返却してもらい、社内で保管します。
従業員へ賃金規定(給与規定)の内容を周知
賃金規定の作成・変更後は、従業員にその内容を周知することが義務付けられています。周知方法は、就業規則を従業員がいつでも閲覧できる場所に備え付ける、
従業員全員に書面を配布する、社内ネットワークを通じて電子データで配布する、メールで送信する、回覧板や掲示板で知らせるなど、様々な方法があります。
重要なのは、すべての従業員が確実に内容を理解し、納得できるようにすることです。変更内容を説明する機会を設けるなど、従業員とのコミュニケーションを積極的に図ることも大切です。
就業規則における賃金規定(給与規定)の項目は具体的に決めてトラブルを避けよう!
この記事では、就業規則における賃金規定に含めるべき項目、取り決める際にトラブルにつながりやすい注意点、実際に規則を決める手順を解説しました。就業規則の賃金規定を適切に作成・運用することで、労使トラブルの発生を未然に防ぎ、健全な職場環境を構築できます。特に、飲食店経営者や初めて外国人を雇用する経営者の方は、賃金規定をしっかりと整備することで、従業員との信頼関係を築き、円滑な労務管理を実現できるでしょう。
従業員の雇用については労働基準法が深く関係していますが、外国人人材であろうと日本人材であろうと日本国内で働く人材に労働基準法は原則適用されます。
自社の人材不足解消のために外国人人材の雇用を検討中の方も、外国人人材にも労働基準法が適用される点は留意しておきましょう。
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