理不尽なクレームにもう悩まない!飲食店がカスハラから自分を守る法律と対応術

カスハラに関する記事のアイキャッチ

 

はじめに

飲食店を経営していると、避けて通れないのが「クレーム対応」と「カスタマーハラスメント(カスハラ)」問題です。

「お客様の不満にはどこまで応えるべき?」「理不尽な要求にどう対応すればいい?」
そんな悩みや疑問を抱えている店長さんや経営者の方は多いはずです。
本記事では、クレームとカスタマーハラスメント(カスハラ)の違いを正しく理解し、法律やルールを味方につけた実践的な対応方法までをわかりやすく解説します。
安心して経営に集中できる環境作りの参考になれば幸いです。

クレームを言っている様子

飲食店で知っておきたい!クレームとカスハラの違いとは

飲食店を経営していると、お客様からのクレーム対応は避けて通れません。
ですが、すべてのクレームが正しいわけではなく、中にはスタッフを苦しめる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」もあります。
この違いをしっかり理解して、適切に対応することが、お店を守り健全に運営するためにとても大切です。

 

クレームとは何か?

飲食店でのクレームとは、お店の料理やサービスを良くするためにお客様が伝えてくれる、納得できる意見のことです。
例えば、スープがぬるかった、料理の提供が遅れた、注文と違うものが届いたなどが挙げられます。
お客様が感じた不満を伝えてくれることで、お店は改善でき、より良いサービスを目指せます。
実際に、誠実にクレームに対応することで、お客様の満足度が上がり、リピーターも増えやすくなります。

 

飲食店でよくあるカスハラの特徴とは?

一方、カスタマーハラスメント(カスハラ)は、サービス向上を目的としない行動です。
暴言や威嚇、大声での怒鳴り、長時間にわたる説教、理不尽な要求など、スタッフの心を傷つける言動がカスハラにあたります。
カスハラはお店の改善につながらず、スタッフの体調を悪くしたり、営業にも悪影響を及ぼします。
また、お店の雰囲気が悪くなり、他のお客様にも迷惑がかかる恐れがあります。

 

イメージ例:料理の提供遅れからの長時間説教

あるお店で、混雑した土曜の夜に料理の提供が20分遅れました。
そのお客様は店長を呼び出し、なんと1時間以上も説教を続けました。
しかも料理の遅れとは関係のない個人的な批判や人格攻撃もあり、店長は仕事に戻れず、ほかのお客様への対応も滞りました。
このような行為はただの不満を超えた悪質なもので、「威力業務妨害罪」(営業を妨げる犯罪)という刑法の罪にあたる可能性があります。
処罰されると、年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。


クレームやカスハラ対応に法律をどう活かす?

お客様からのクレームやカスハラにどう対応すればいいか、迷ったことはありませんか?
実は、法律の知識を味方につけることで、トラブルを未然に防ぎ、安心してお店を守ることができます。
ここでは、飲食店が知っておくべき法律や、具体的な対応方法をわかりやすく解説します。

カスタマーハラスメントと紙に書いている様子


  1. 飲食店が押さえるべき法律とは?

    飲食店がクレームやカスハラ対応の際に知っておきたい法律には、主に次のようなものがあります。

      1. ・刑法第234条「威力業務妨害罪」
        お客様が暴力や威力を使って店舗の営業を妨げた場合に適用されます。
        例えば、長時間にわたる怒鳴り声や説教で業務に支障が出たケースが該当します。
        【罰則】3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。


        ・刑法第230条「名誉毀損罪」
        事実に反する悪い内容の情報を広め、店舗やスタッフの名誉を傷つけた場合に問われます。
        SNSでの虚偽投稿などが具体例です。
        【罰則】3年以下の懲役または50万円以下の罰金、または短期間の拘束や軽い罰金が科されることがあります。


        ・民法第709条「不法行為」
        他人の権利や利益を不当に侵害し、損害を与えた場合に、その損害の賠償を請求できる規定です。
        悪質なクレームや誹謗中傷によって店舗に損害が生じた場合に活用されます。
        【内容】刑事罰ではなく、損害を補償するための民事上の責任を問うものです。

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    イメージ例:SNSでの虚偽クレーム

    たとえば、ある飲食店が「虫が入っていた」とSNS上で虚偽の投稿をされたとします。
    この時、店舗側は監視カメラの映像を証拠として提出し、事実無根であることを証明しました。
    その結果、投稿者に対して名誉毀損として慰謝料30万円を請求し、回収に成功しました。
    こうしたケースでは、冷静に証拠を集めて法律を味方につけることが大切です。

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    飲食店のクレーム・カスハラ問題で警察に相談する際のポイント


    トラブルが深刻な場合は、速やかに警察へ相談しましょう。
    効果的な相談のためには、次のポイントを押さえておくことが大切です。

    • 日時・発言の記録を残す
      いつ、どんな言葉を使われたか詳細にメモや録音を行いましょう。

    • 録音や映像などの証拠を集める
      監視カメラの映像、店内録音、証人の証言なども重要です。

    • 該当する罪名を明確に伝える
      「威力業務妨害」「名誉毀損」など、法律用語を調べて整理しておくと相談がスムーズです。

    • 被害届や告訴状を提出する
      被害が確認できれば、正式な手続きを進めることが可能です。

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    弁護士に相談するときの具体的なステップ|飲食店の法律トラブル対応

    警察相談だけでなく、法律の専門家である弁護士に早めに相談するのも賢明です。
    弁護士に相談するときは、以下の点を意識しましょう。

    • 無料相談を活用する
      多くの法律事務所が初回無料相談を実施しています。気軽に相談しやすいです。

    • 証拠や経緯を整理する
      日時、発言内容、証拠の種類や状況をわかりやすくまとめておきましょう。

    • 内容証明郵便や交渉代理を依頼する
      弁護士を通じて正式な抗議文を送ったり、交渉を代理してもらうことが可能です。


    以上のように、クレームやカスハラ対応には法律の基礎知識と適切な手順が欠かせません。
    正しい対応でお店を守り、安心して営業できる環境を整えましょう。

     

飲食店でクレームやカスハラを防ぐには?効果的なルール作りと掲示のポイントは?

「クレームやカスハラをどうやって防げばいいの?」
「スタッフが迷わず対応するには何が必要なの?」
そんな疑問を解消するために、効果的なルール作りと掲示の方法をご紹介します

 

ルールの重要性、確認してる?

飲食店では、スタッフがどのように対応すべきかを明確に示したマニュアルや行動基準を作ることが大切です。
ルールが明文化されていると、スタッフは対応に迷うことが少なくなり、自信を持ってお客様に接することができます。
また、ルールをきちんと守ることで、クレームの悪化を防ぎ、トラブルが起こった際にも迅速かつ適切な対応が可能になります。

 

店内掲示文例(抑止力重視)

「当店では、他のお客様や従業員への暴言・威嚇・長時間説教など、業務妨害行為を固くお断りします。」
(刑法第234条 威力業務妨害罪)

このように、先に紹介した具体的な法律の条文を示すことで、防止力が高まり、悪質なクレームやカスハラの抑制に効果的です。

 

店内掲示文例(柔らかめ)

「お客様とスタッフが気持ちよく過ごせる空間を大切にしています。暴言・威嚇・過剰な要求はご遠慮ください。」

よりやわらかい表現で、初めて見るお客様にも伝わりやすく、温かみのある雰囲気を作れます。
店舗の雰囲気やスタッフの方針に合わせて使い分けると良いでしょう。

 

飲食店での店内掲示はどこに設置すべき?作り方のポイントは?

掲示は目に付きやすい場所に設置することが重要です。
具体的には、入口付近やレジ周り、スタッフとお客様がよく行き来する通路などが適しています。
また、スタッフルームにも掲示しておくことで、スタッフ間でルールの共有と意識向上が図れます。

掲示物は文字だけでなく、イラストやピクトグラム(絵文字)を使うと、より視覚的に伝わりやすくなります。
色使いは店舗の雰囲気に合わせつつ、注意喚起したい部分は目立つ色を使うと効果的です。

定期的に内容を見直し、季節や状況に応じて更新することで、掲示物の効果を保つことができます。

スタッフが自信を持って対応できる環境作りのために、掲示物はシンプルかつわかりやすく作成しましょう。


現場で起きる!飲食店がハマりやすいクレームトラブルの落とし穴とは?

あなたのお店では、こんな対応でトラブルを悪化させていませんか?
知らずに陥りやすい落とし穴と、その効果的な回避策を紹介します。

付箋と人がいる様子

常時クレーマーの放置が飲食店のカスハラ問題を悪化させる理由とは?

同じお客様が繰り返し理不尽なクレームやカスハラを行う場合、放置してしまうとスタッフの負担が増え、他のお客様へのサービスにも悪影響が及びます。
早めに状況を把握し、必要に応じて入店禁止などの措置を検討することが重要です。
適切な対応はスタッフの心身の健康を守り、職場環境の悪化を防ぎます。

 

飲食店の評判にSNS拡散はどんな影響を与える?

最近では、事実と異なる情報がSNSで瞬く間に広がることがあります。

たとえば、2020年4月に三重県の飲食店で新型コロナウイルスの感染者が出たという虚偽の情報がSNS上で拡散されました。この影響で店舗には多くの予約キャンセルが相次ぎ、営業に大きな打撃を受けました。

こうした虚偽の情報拡散は店舗の評判を著しく損なうだけでなく、経営にも深刻な影響を与えます。SNSでの情報は瞬時に広がるため、事実確認と迅速な公式発表による対応が被害拡大を防ぐ鍵となります。

飲食店では、こうしたリスクに備え、SNS上の情報管理や対応策を事前に整えておくことが重要です。

 

曖昧なルールは飲食店のクレーム・カスハラ対策で法律トラブルを招く?

クレームやカスハラ対応のルールが曖昧だと、スタッフがどう対応すべきか迷ってしまい、結果としてトラブルが長引いたり拡大したりする恐れがあります。
明確で具体的なルールを定め、スタッフ全員で共有しておくことが、スムーズかつ効果的な対応につながります。

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  • 明確で具体的なルールの例

・暴言や威嚇は禁止
 スタッフや他のお客様に対する暴言や威嚇行為は一切認めません。違反があった場合は即時に対応し、必要なら退店をお願いすることがあります。

・長時間の説教や粘着行為を禁止
 1回のクレーム対応は最大30分までとし、それを超える説教や執拗な要求は業務妨害とみなします。

・SNSでの虚偽情報の拡散禁止
 虚偽の投稿や誤情報をSNSにアップすることは法的措置の対象となる旨を明記。

・入店禁止の基準
 繰り返し悪質なクレームやカスハラを行うお客様には、警告後に入店禁止措置をとる場合があることを明示。

 

具体的なルールを作ったらどう活用する?

  • ・スタッフ専用スペースや休憩室に掲示する
    スタッフがいつでも確認できる場所に掲示し、対応の迷いや不安を減らします。

  • ・定期的にミーティングで共有・確認する
    新しいスタッフへの教育や、対応に困った時の相談材料として活用しましょう。

  • ・店内の見える場所にも柔らかめの掲示を置く
    お客様にも適切なマナーやルールを知ってもらうことで、トラブルの未然防止につながります。

  • ・ルールを根拠に冷静かつ一貫した対応をする
    感情的な対応を避け、ルールに基づく説明ができるため、カスハラや悪質クレームの抑制に効果的です。



飲食店のクレーム・カスハラ対応はどう進めるべき?実践フローを解説!

クレームやカスハラが起きたとき、あなたのお店はどのように対応していますか?
慌てずにスムーズに対処するための具体的なステップを押さえておきましょう。

ステップが紙に書いてある

初期対応

まずは冷静に事実関係を確認しましょう。
お客様の話をよく聞き、誤解や行き違いがないかを丁寧に確認します。
必要に応じて謝罪や補償を行い、問題の早期解決を目指します。
感情的にならず、スタッフ全員が落ち着いて対応することが大切です。

 

証拠確保

トラブルが長引く場合に備え、会話の録音や監視カメラの映像、レシートなどの証拠をしっかり保存しましょう。
これらの証拠は、後の警察や弁護士への相談時に重要な役割を果たします。
証拠を集める際は、法律やプライバシーに配慮しつつ慎重に行う必要があります。

 

内部共有

問題発生時は、スタッフや店長間で速やかに情報を共有しましょう。
全員が同じ状況を把握し、統一した対応が取れるようにすることで、混乱や誤解を防げます。
また、対応の進捗や結果も定期的に報告・確認することが望ましいです。

 

掲示・ルール活用

店内掲示やマニュアルは、スタッフの対応を後押しする強い味方です。
問題が起きた際は、これらを根拠に冷静かつ一貫した対応を心がけましょう。
事前にルールを明確にしておくことで、クレーム対応時の判断ミスや感情的な対応を防げます。

 

外部相談

状況が深刻な場合は、躊躇せず警察や弁護士に相談しましょう。
専門家のアドバイスや法的措置は、トラブルの早期解決や再発防止に繋がります。
特に威力業務妨害や名誉毀損などの犯罪行為が疑われる場合は、迅速な対応が求められます。

まとめ

法律の知識と確かな証拠、そして明確なルールを持つことで、飲食店は理不尽なクレームやカスハラからしっかりと守られます。
スタッフの心身を守り、お客様に誠実な対応ができる体制があれば、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

安心できる職場環境を整えることは、スタッフが自信を持って接客に臨める土台となります。
結果として、顧客満足度の向上やリピーターの増加、そして売上アップへとつながっていくでしょう。
お店の未来を明るくするためにも、今回の知識を活かし、積極的に良い環境づくりを進めていきましょう。

今こそ行動を起こすチャンスです。法律を味方に、確実な対応策を実践し、理不尽なクレームやカスハラに負けない強いお店を作りましょう。

 

 

豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。
豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。