飲食店のごみ出しルールを知らないと違法に?ごみ処理の法律違反と罰金リスクを解説!

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はじめに:飲食店の“ごみ出しルール”を知らないと違法になることも?

「ゴミの出し方くらい誰でもわかる」と思っていませんか?
しかし、飲食店の“ごみ出しミス”が廃棄物処理法違反になり、罰金や営業停止に発展することがあります。

特に「区分を間違える」「業者任せにする」など、日常の小さな行為が原因になることも。
本記事では、中小規模の飲食店経営者・店長さん向けに、ごみ出しルールと廃棄物処理の法律上のポイントをわかりやすく解説します。
最後には判例(こちらのPDF参照)も紹介します。

清掃をした部屋


飲食店のゴミは「家庭ゴミ」と違うって本当?

はい、本当です。
飲食店で出るゴミは、家庭で出るゴミとは法律上の扱いがまったく異なります
飲食店は事業活動として廃棄物を出すため、そのゴミは「事業系廃棄物」に分類されます。
廃棄物処理法に基づき、自店の責任で分別・保管・処理・委託を行う義務があるのです。
つまり、「家庭ゴミのついでに出す」「近くの集積所に置く」といった行為は、知らずに法律違反になるおそれがあります。

では、具体的にどんなルールがあるのでしょうか?
まずは、飲食店に適用される基本の法律「廃棄物処理法」から見ていきましょう。

 

廃棄物処理法の基本ルールとは?

廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)第3条第1項では、

「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を、自らの責任で適正に処理しなければならない」
と明記されています。

つまり、飲食店で発生するゴミは事業者自身に処理責任があるということ。
「業者に任せたから関係ない」ではなく、委託しても最終的な責任はお店にある点が重要です。

さらに、廃棄物はその性質によって「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられ、処理の流れ・委託先・管理方法がすべて異なります。
ここを理解していないと、悪気がなくても委託基準違反や廃棄物処理法違反に問われることがあります。

 

委託基準違反とは、廃棄物の処理を「許可を持たない業者」や「基準に合わない方法」で任せることを指します。
たとえば、産業廃棄物を一般ゴミとして出したり、無許可業者に回収を頼んだ場合などがこれに当たります。
たとえ業者の側に問題があっても、排出した飲食店も責任を問われるおそれがあります。

 

また、廃棄物処理法は、ゴミの処理や再利用、環境保全のためのルールを定めた法律です。
目的は「生活環境の保全」と「公衆衛生の向上」。
飲食店を含むすべての事業者に、ゴミを安全に・正しく・責任をもって処理する義務を課しています。

 



一般廃棄物と産業廃棄物の違いを知っていますか?

区分 主な内容 委託先
事業系一般廃棄物 紙くず・生ごみ・おしぼりなど 市町村の許可業者
産業廃棄物 廃油・金属くず・汚泥(グリストラップ)等 都道府県許可業者

たとえば、調理後に残る揚げ油グリストラップの汚泥は「産業廃棄物」に分類され、家庭ゴミや事業系一般廃棄物とはまったく別ルールで扱う必要があります。

この「産業廃棄物」を市区町村の回収に混ぜて出したり、
無許可業者に処理を委託したりすると、廃棄物処理法第12条・第16条違反に当たる可能性があります。

また、最近では油の不法投棄や、無許可業者による不適正処理が問題になっています。
環境汚染を防ぐためにも、飲食店側が「どの廃棄物がどの区分に当たるか」を理解し、信頼できる許可業者に正しく委託することが不可欠です。


飲食店ではどんな「ごみ出しルール違反」が法律に触れるの?

飲食店の“ごみ出しルール”を守らない行為は、ほんの小さな行為でも廃棄物処理法違反に問われることがあります。
「うちは少量だから大丈夫」「業者に任せているから安心」と思っていても、処理方法を誤れば罰金や懲役の対象になるケースがあります。

ここでは、飲食店で特に多い違反パターンを紹介します。
「知らなかった」では済まされない内容ばかりなので、ぜひ確認しておきましょう。

 

よくある違反パターン

    • ・家庭ゴミとして出す(第25条違反)
       事業で出たゴミを家庭ゴミと一緒に出す行為は、法律上の「不法投棄」にあたる可能性があります。
       「少量だから」と思っても、事業ゴミは必ず事業者として処理しなければなりません。

    • ・無許可業者に委託する(第12条・第16条違反)
       許可を持たない業者へ回収を依頼すると、たとえその業者が不法投棄をした場合でも、
       飲食店側にも責任が及びます。
       委託前には「一般廃棄物収集運搬許可」または「産業廃棄物収集運搬許可」を必ず確認しましょう。

    • ・マニフェスト(管理票)を交付しない(第27条違反)
       産業廃棄物を処理する際は、業者にマニフェスト(管理票)を渡して処理を追跡する義務があります。
       これを怠ると、処理状況が不明となり、結果的に不法投棄の共犯と見なされることもあります。

    • ・保管基準を守らない(第12条の2違反)
       ゴミを屋外に放置したり、悪臭・漏れ・虫害を発生させたりすると、
       保管基準違反になります。
       密閉容器や防虫管理を行い、衛生的かつ安全に保管する必要があります。

    このような違反は、「意図せずやってしまった」場合でも処罰されることがあります。
    廃棄物処理法は、排出事業者(=飲食店)にも最終責任があることを明確に定めているためです。

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飲食店における廃棄物処理法違反の罰則の一例(個人・法人)

違反内容 罰則
不法投棄 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下)
委託基準違反 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
マニフェスト違反 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
保管基準違反 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

行政指導だけで済むと思われがちですが、刑事罰に発展するケースも多く存在します。
東京高裁や最高裁でも、「業者に任せていたから責任はない」と主張した飲食店側に、共同責任(排出事業者責任)を認めた判例があります。

特に、許可のない業者に委託した場合や、マニフェストを交付していない場合は要注意。
知らないうちに違法なゴミ処理に加担していると見なされるおそれがあるため、日常業務の中で一つひとつの処理を確認することが大切です。

 

判例紹介:業者まかせでも「お店にも責任あり」

(参考:最高裁平成21年3月10日判決・裁判所PDF

この裁判では、ある会社が産業廃棄物の処理を業者に任せていました。
ところが、その業者が山林に不法投棄をしてしまい、問題になったのです。

会社側は「うちは業者に頼んだだけだから関係ない」と主張しましたが、裁判所はそれを認めませんでした。
最高裁は、

「ゴミを出した側(排出事業者)にも、処理が適正に行われるよう確認する責任がある」
と判断したのです。

つまり、業者に任せて終わりではなく、飲食店にも“見届ける義務”があるということ。
もし委託先が無許可業者だったり、不法投棄をしていた場合には、お店も一緒に責任を問われる可能性があります。

この判例は、飲食店でも「ゴミ処理をどの業者に頼むか」「マニフェストを発行しているか」をしっかり確認することの大切さを示しています。

🔹ポイント:ゴミを出したお店にも“最終責任”がある。委託しても、廃棄物処理法第3条・第12条のルールは守る必要があります。


飲食店が守るべきゴミ処理ルールとは?

飲食店では、毎日の営業でさまざまな種類のゴミが出ます。
そのひとつひとつを「なんとなく」で処理していると、廃棄物処理法違反になるおそれがあります。
大切なのは、ゴミの性質に応じて「分けて・保管して・正しい業者に出す」こと。これが、どんな飲食店にも共通する基本ルールです。
では、具体的にどんな点に注意すべきでしょうか?

ポイント

 

 ゴミの区分・分別を徹底しよう

  • まず最初に重要なのが区分と分別です。
    「生ごみ」「廃油」「プラスチック」「金属」など、種類ごとに明確に分けましょう。
    その際、ゴミ箱や容器にはラベルを貼っておくことで、従業員が迷わず捨てられます。

    特に注意したいのは産業廃棄物の混入です。
    グリストラップの汚泥や廃油、金属くずなどは一般ゴミとは処理ルートが異なります。
    お店で出る廃棄物をあらかじめリスト化しておくことで、どの業者に頼むべきかが明確になり、違反を防げます。

  •  

保管と清掃を正しく行う

ゴミを「出す」だけでなく、「出すまでの保管」も重要です。
廃棄物処理法では、廃棄物を保管するときに環境や衛生を損なわないよう保管基準(第12条の2)が定められています。

ゴミは防水性・防虫性の容器で保管し、雨ざらしや悪臭が出る状態はNGです。
生ごみや油類は特に臭いや液漏れが発生しやすいため、蓋つき容器を使い、定期的な清掃を徹底しましょう。
また、回収日を明確に決めて長期保管を避けることで、衛生管理と法令遵守の両方を実現できます。

 

委託業者を選ぶときの注意点

  1. 最後に欠かせないのが業者選びです。
    許可を持たない業者に依頼すると、たとえ不法投棄をしたのがその業者でも、お店側にも責任が及びます。

    委託前には、必ず許可証の有無を確認しましょう。
    「収集」「運搬」「処理」のそれぞれで許可が分かれているので要注意です。
    契約書には処理内容・回収頻度・責任範囲を明記し、処理が完了したらマニフェスト(管理票)を発行してもらうことが大切です。

    また、業者がさらに別の業者に再委託していないかも確認しましょう。
    処理後は領収書や証明書を5年間ほど保管しておくと、万一行政から確認が入った際にもスムーズに対応できます。


飲食店のゴミ処理に関するよくある質問(Q&A)

飲食店の経営者や店長さんからは、「うちのゴミの出し方、これで大丈夫?」という相談がよくあります。
実は、少しの勘違いで廃棄物処理法違反になってしまうケースが多いのです。
ここでは、特に質問の多い内容をQ&A形式でわかりやすく解説します。
どれも日常の「ゴミ処理ミス」につながる重要なポイントなので、ぜひ確認してみてください。

 

「少量だから家庭ゴミでいい?」

いいえ。飲食店のゴミはすべて“事業系ゴミ”です。
事業活動で出たゴミは、たとえ袋ひとつでも家庭ゴミに混ぜて出すことはできません。
自治体の家庭ゴミ収集に紛れ込ませると、**廃棄物処理法第25条違反(不法投棄扱い)**になるおそれがあります。

特に、ランチ営業だけの小規模店舗や個人経営店ほど「少量だから」と誤解しがちです。
ゴミの種類や量にかかわらず、必ず事業者として市町村の許可業者に委託しましょう。
地域によっては、事業系ゴミ専用の指定袋や収集日が決まっているので、自治体のルールも確認が必要です。

 


「委託業者が不法投棄しても責任ある?」

はい。あなた(飲食店側)にも責任があります。
廃棄物処理法第3条・第12条では、排出事業者には**「最終的な処理責任」**があると明記されています。
つまり、「業者に頼んだら終わり」ではなく、その業者が適正に処理しているか確認する義務があるのです。

飲食店でも、廃棄物処理業者の「許可番号」「処理ルート」「最終処分先」を確認し、必要に応じてマニフェスト(管理票)を交付・保存しておくことが重要です。

 

「許可業者なら完全に安心?」

基本的には安心ですが、“すべて任せきり”は危険です。
たとえ許可を持つ業者でも、許可範囲(地域・廃棄物の種類)が合っていなければ違法処理になります。
たとえば、「可燃ゴミの許可しかない業者に油類を出す」といったケースは違反にあたることがあります。

また、処理を他の業者に再委託している場合も注意が必要です。
自店のゴミがどこで、どのように処理されているのかをマニフェスト制度で追跡することで、廃棄物処理法の遵守とトラブル防止の両方を実現できます。

🔸 ポイント:許可がある=安心ではない。
契約内容・処理範囲・書類確認まで、お店側が自分でチェックする姿勢が大切です。


 


飲食店で今日からできるゴミ処理チェックリスト

飲食店では、日々の営業の中でどれだけ気をつけていても、ゴミ処理に関する法律違反が“うっかり”起きてしまうことがあります。
でも、ポイントを押さえれば今日からすぐに実践できる改善が可能です。

以下のチェックリストを使って、自分のお店のゴミ処理体制を一度見直してみましょう。
すべてが「はい」で答えられる状態になっていれば、廃棄物処理法の基本ルールはしっかりクリアしています。

チェック

チェック項目
ゴミを種類別に仕分けている  
産業廃棄物を把握している  
許可業者に委託している  
契約書・領収書を保管している  
マニフェストを発行している  
定期的に業者を見直している  

 

このチェックリストは、特に中小規模の飲食店におすすめです。
一つでも空欄があれば、すぐに改善できるポイントがあるということ。
たとえば、契約書やマニフェストを見直すだけでも、法令遵守の度合いが大きく変わります。


まとめ:飲食店の“ごみ出しルール”とゴミ処理は「経営リスク管理」の第一歩

飲食店におけるゴミ処理は、ただの清掃作業ではなく、法令順守と信頼を守る経営課題です。
廃棄物処理法を理解し、区分・委託・マニフェストを正しく行うだけで、罰則やトラブルの多くは防ぐことができます。

日々のゴミ処理を丁寧に行うことは、罰則を避けるだけでなく、お客様や地域からの信頼を守ることにもつながります。
「環境に配慮した飲食店」として評価されることは、結果的に経営の強みとなり、選ばれるお店づくりにも役立ちます。

今日からぜひ、「正しいゴミ処理=信頼される飲食店経営」として、お店全体で意識を高めていきましょう。

 

 

豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。
豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。