飲食店の閉店・休業が決まったら従業員はどうなる?解雇・休業手当の基本

はじめに飲食店の閉店・休業が決まったら従業員はどうなる?解雇・休業手当の基本

飲食店の閉店や休業が決まった際、「従業員を解雇しても問題ないのか」「営業しない期間の給与はどうすればよいのか」と悩む店長や経営者も多いのではないでしょうか。

飲食店の閉店・休業に伴う従業員の扱いは、会社全体を廃業するのか、店舗だけを閉店するのか、一時的に休業するのかによって異なります。また、解雇予告や休業手当など、法律に基づいて対応しなければならない事項もあります。

この記事では、飲食店の閉店で従業員を解雇する際のルールや休業手当の基本、労務トラブルを防ぐためのポイントをわかりやすく解説します。

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飲食店の閉店が決まったら従業員を自由に解雇できる?

飲食店の閉店が決まっても、従業員を自由に解雇できるわけではありません。会社全体を廃業する場合と、複数ある店舗のうち一店舗だけを閉店する場合では、雇用を継続できる可能性が異なります。まずは、閉店の状況に応じた対応を確認しましょう。

 

会社そのものを廃業する場合、従業員はどうなる?

会社全体を廃業し、事業を終了する場合、従業員との雇用契約を終了させることが考えられます。ただし、廃業するからといって、解雇に関する法律上のルールがすべて適用されなくなるわけではありません。

労働契約法第16条では、解雇に客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合、解雇は無効とされています。また、解雇する場合には、原則として労働基準法第20条に基づく解雇予告などの手続きが必要です。

なお、会社の廃業・解散と、店舗の閉店は同じではありません。会社を解散・清算する場合には、法人としての手続きも別途確認しましょう。

 

店舗だけを閉店する場合、従業員を解雇してもいい?

複数店舗を運営している会社が一店舗を閉店する場合、従業員を別店舗へ異動させるなど、雇用を継続する方法を検討することが重要です。

経営不振などを理由に人員削減を行う「整理解雇」では、人員削減の必要性、解雇を避ける努力、対象者の選定の合理性、従業員への説明などが考慮されます。

そのため、店舗を閉店するという理由だけで、従業員を一方的に解雇できるとは限りません。配置転換や勤務先の変更が可能かどうかも含め、慎重に判断しましょう。

飲食店の閉店で従業員を解雇するとき、何に注意すべき?

飲食店の閉店に伴って従業員を解雇する場合は、解雇が法律上有効かを確認したうえで、必要な手続きを進めます。特に重要なのが、解雇予告と解雇予告手当のルールです。

 

飲食店の閉店時に必要な解雇予告とは?

労働基準法第20条では、従業員を解雇する場合、原則として少なくとも30日前に予告することが定められています。30日前までに予告しない場合は、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。

例えば、解雇日の10日前に予告した場合、原則として20日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。予告をせず即時に解雇する場合は、原則として30日分以上の平均賃金が必要です。

ただし、天災事変などによって事業の継続が不可能となった場合など、法律上の例外もあります。例外の適用には条件があるため、閉店するという事情だけで解雇予告が不要になるとは考えないようにしましょう。

 

飲食店の閉店でアルバイト・パートも解雇予告が必要?

アルバイトやパートであっても、原則として解雇予告のルールは適用されます。正社員ではないからといって、閉店日に突然雇用契約を終了させてよいわけではありません。

また、契約期間が決まっているアルバイトやパートを契約期間の途中で解雇する場合、労働契約法第17条により、やむを得ない事由が必要とされています。

 

※雇用形態や契約内容によって扱いが異なるため、雇用契約書を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

飲食店を休業するとき、従業員に休業手当は必要?

飲食店を一時的に休業する場合、店舗側の都合で従業員を休ませると、休業手当の支払いが必要になることがあります。閉店とは異なり、雇用契約を継続したまま営業を休む場合には、給与の扱いを確認することが大切です。

 

飲食店の休業で休業手当が必要になるのはどんなとき?

労働基準法第26条では、使用者の責任に帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中、従業員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないと定めています。

例えば、次のようなケースでは、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

  • ・店舗の改装工事のため、一時的に営業を休止する

  • ・経営上の都合で営業日を減らし、従業員を休ませる

  • ・店舗側の判断で予約や来客が少ない日に営業を取りやめる

具体的な判断は休業の事情によって異なりますが、店舗側の都合で従業員を休ませる場合は注意が必要です。

例えば、平均賃金が1日8,000円の従業員を休業させた場合、休業手当は原則として1日4,800円以上となります。

なお、平均賃金は通常の時給や日給と必ずしも同じではありません。実際の計算では、労働基準法上の平均賃金の算定方法を確認しましょう。

 

飲食店の休業でも休業手当が不要になることはある?

地震や台風などの自然災害によって飲食店を休業する場合、休業手当の支払いが不要となる可能性があります。ただし、災害が発生したという理由だけで、必ず支払いが免除されるわけではありません。

休業手当の支払い義務があるかどうかは、原因が事業の外部から発生したものか、事業主が通常の注意を尽くしても避けられないものかなど、具体的な事情を踏まえて判断されます。

例えば、台風の接近に伴って自主的に営業を取りやめた場合と、災害によって店舗が損壊し営業できなくなった場合では、判断が異なる可能性があります。

 

※判断に迷うときは、労働基準監督署などに相談しましょう。

飲食店の閉店・休業で従業員とトラブルにならないためには?

飲食店の閉店や休業に伴う労務トラブルを防ぐには、従業員への早めの説明と、法律に沿った手続きが重要です。閉店日や給与の扱いを明確にし、従業員が今後の生活や仕事の見通しを立てられるように配慮しましょう。

 

飲食店の閉店を従業員にいつ・どのように伝える?

閉店が決まったら、可能な限り早い段階で従業員に説明することが大切です。伝える際は、閉店日や休業期間だけでなく、雇用契約を継続するのか、解雇するのか、別店舗への異動が可能なのかも整理しておきましょう。

解雇する場合は、解雇理由や解雇日を明確に伝え、解雇予告などの手続きを適切に行います。また、説明した内容や合意事項を書面などに残しておくと、後の認識の食い違いを防ぎやすくなります。

 

飲食店の閉店時に確認すべき手続きは?

閉店時には、従業員の雇用契約だけでなく、給与や社会保険などの手続きも確認する必要があります。

具体的には、次の項目を確認しましょう。

確認項目

なお、退職勧奨と解雇は異なります。退職勧奨は、会社が従業員に退職を勧めることであり、従業員が応じるかどうかは原則として本人の判断です。退職を強制するような対応は避けましょう。

手続きに不安がある場合は、社会保険労務士や労働基準監督署などの相談先を活用することも有効です。

【Q&A】飲食店の閉店・休業と従業員に関するよくある質問

飲食店が閉店したら、従業員は必ず退職しなければならない?

必ずしもそうではありません。店舗だけの閉店であれば、別店舗への異動などによって雇用を継続できる場合があります。会社全体を廃業する場合も、解雇などの手続きや雇用契約の扱いを適切に確認する必要があります。

 

飲食店の閉店で従業員が退職を求められたら、必ず応じる必要がある?

退職勧奨を受けても、従業員が必ず応じなければならないわけではありません。退職届を提出する前に、退職理由や退職日、給与などの条件を確認しましょう。解雇を告げられた場合は、解雇理由や解雇予告の手続きについても確認することが大切です。

まとめ

飲食店の閉店・休業が決まった場合、従業員の扱いは会社全体の廃業か、店舗のみの閉店か、一時的な休業かによって異なります。

解雇する場合は、労働契約法第16条などに基づく解雇の有効性や、労働基準法第20条の解雇予告のルールを確認しましょう。また、店舗側の都合で休業させる場合は、同法第26条に基づく休業手当が必要になることがあります。

法律に沿った手続きと丁寧な説明を心がけ、従業員との労務トラブルを防ぎましょう。

なお、解雇や休業手当の判断は、雇用契約や休業の理由などによって異なります。対応に迷った場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談し、自店舗の状況に合った対応を確認しましょう。

 

豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。
豊幡佳乃
立命館大学 法学部 大学で法律を専門的に学び、法的知識を基盤に飲食業界向けの記事を執筆。食べることが大好きという自身の関心を活かし、飲食店経営者やスタッフの方々が直面しやすい法律問題や制度のポイントを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすくお届けしていきたいと考えています。