2026/02/18
2025年外食市場を総括|売上は回復、利益は?2026年飲食店経営者が知るべき成長とリスク
飲食店経営者が見るべき「成長とリスク」の1年間?
2025年の日本の外食市場は、国内需要の底堅さに加え、インバウンド需要の回復や客単価の上昇が重なり、年間を通じて前年を上回る売上推移となりました。一方で、物価高、消費者の節約志向、人手不足といった課題も顕在化し、「売上は戻ったが経営は楽にならない」という声が多く聞かれる1年でもありました。
本記事では、日本フードサービス協会が公表する月次データをもとに、2025年1月から12月までの外食市場を振り返りながら、飲食店経営者が押さえるべき成長要因とリスク、そして2026年に向けた経営判断のポイントを整理します。
1月〜3月|インバウンド回復と客単価上昇で好調なスタート
2025年1月の外食市場は、国内移動需要と訪日外国人需要の回復を背景に、売上前年比約107.7%と堅調なスタートを切りました。前年末から続く観光需要の流れを受け、客数・売上ともに伸長しましたが、同時に業態や企業規模による差も見え始めました。
2月もインバウンド需要と価格改定による客単価上昇が売上を押し上げ、前年比約106%とプラス成長を維持しました。低価格帯のキャンペーン効果が見られる一方、消費者の節約志向も徐々に強まりつつあり、価格に対する反応の変化が意識される局面となりました。
3月は歓送迎会や春休み需要に加え、引き続きインバウンドが追い風となり、売上は前年比約107%で推移しました。ただし、物価高の影響から消費者の選別行動が進み、業態間・店舗間の差がより鮮明になり始めています。
4月〜6月|客単価主導の成長と大型連休の追い風に?
4月は春の行楽シーズンとゴールデンウィーク前の需要を背景に、インバウンドと客単価上昇が相乗効果を生み、売上は前年比約106%となりました。物価高への懸念は残るものの、外食需要自体は底堅く推移しています。
5月はゴールデンウィークに加え、大阪・関西万博の集客効果なども重なり、売上は前年比約110.8%と年間でも高い伸びを記録しました。都市部や観光地立地ではインバウンド需要が顕著でしたが、原材料費や人件費の高騰により、利益面では厳しさが続いています。
6月は梅雨や天候要因の影響を受けながらも、外食市場全体として前年を上回る売上を維持しました。上半期を通じて、外食市場が回復基調にあることがデータ上でも確認される一方、成長の中身が「単価主導」である点が明確になってきました。
7月〜9月|夏需要と節約志向のせめぎ合い
7月は売上前年比8.7%増となり、44カ月連続の前年比プラス成長を達成しました。値上げによる客単価上昇やインバウンドの取り込みが主な要因ですが、人件費や原価負担の重さが経営課題として浮き彫りになっています。
8月は猛暑やお盆の帰省需要により外食需要が活性化し、前年比108.4%と引き続き堅調に推移しました。ただし、客数の伸び悩みや天候・立地による影響の差が目立ち、業態ごとの戦略がより重要になりました。
9月は残暑や物価高の影響で節約志向が強まり、客足が鈍る局面も見られましたが、ファストフードや低価格帯業態が市場全体を下支えしました。客単価上昇により、売上は前年比約104.8%とプラスを維持しています。
10月〜11月|消費者行動の二極化が鮮明になった?
10月は前年比約107.3%と堅調に推移し、ファストフードなどの低価格帯業態に加え、レストランや喫茶、ファミリーレストランなど幅広い業態で売上が伸びました。節約志向の中でも、「価値を感じる外食」への支出は維持されていることがうかがえます。
11月も前年比約8.7%増と好調が続き、客数・客単価ともにプラス基調を維持しました。一方で、一部の居酒屋業態ではインバウンド団体客のキャンセルなど、不安定要因も見られています。
2025年外食市場分析から経営者が押さえるべきポイントは?
2025年の外食市場は「回復している」と一言で片付けられがちですが、日本フードサービス協会の月次データを通年で見ると、経営者が冷静に押さえるべき重要なポイントがいくつか浮かび上がります。
1. 外食需要は回復したが、「量」ではなく「使い方」が変わった?
2025年を通して外食需要そのものは底堅く、連休や季節イベントのある月は売上がしっかり伸びました。ただし、これは外食頻度が以前の水準に完全に戻ったという意味ではありません。消費者は外食をやめたわけではなく、「回数を絞り、行く店を選ぶ」行動に移行しています。その結果、選ばれた店には人が集まり、そうでない店は客数が戻らないという二極化が進みました。
2. 売上増の正体は客単価上昇。利益が増えているとは言えないのはなぜ?
2025年の売上成長を支えた最大の要因は、客数回復ではなく客単価の上昇です。原材料費や人件費の高騰を背景に、多くの店舗が価格改定を行い、その結果として売上高は前年を上回りました。しかし同時に、コスト増も続いており、「売上は伸びたが利益は増えていない」「むしろ資金繰りが厳しい」というケースも少なくありません。売上高だけを見る経営は、2025年で限界がはっきりしたと言えるでしょう。
3. インバウンド回復は事実だが、恩恵は地域と業態に偏っている
都市部や観光地では訪日外国人の回復が売上を押し上げましたが、その効果は全国一律ではありません。地方や生活圏立地の飲食店では、インバウンド増加の実感が乏しいまま、コストだけが上がっているケースも多く見られます。2025年は「インバウンドが追い風」という言葉の裏で、立地と業態による格差が一段と広がった年でした。
4. 「やるべき施策」は市場ではなく、自店の条件で決める時代に入った?
インバウンド対応、価格戦略、人材投資など、2025年は選択肢が増えた一方で、すべてを同時に進める余裕がある店舗は多くありません。重要なのは、市場全体のトレンドに合わせることではなく、自店の立地、客層、回転率、原価構造に合ったレベルで施策を設計することです。インバウンド対策も「やるか・やらないか」ではなく、「どこまでやるか」を見極める段階に入っています。
2025年の分析から見えた主な課題は?
売上は伸びているが、利益が残りにくい構造とは_
売上増の多くは客数増ではなく、価格改定による客単価上昇によるものです。原材料費・人件費・水道光熱費の上昇を価格に転嫁することで表面的な売上は伸びましたが、利益率が改善していない店舗も多く見られます。特に中小飲食店では、値上げの限界が見え始めています。
消費者行動の二極化と立地差の拡大
日常外食では価格・利便性重視、特別な外食では体験重視という二極化が進行しました。その結果、中途半端な価格帯・価値提案の店舗ほど厳しい状況に置かれています。
インバウンド需要は万能?
都道府県別データを見ると、インバウンドの恩恵は一部地域・立地に集中しています。対応投資が十分に回収できていないケースも多く、2026年は採算性がより厳しく問われます。
2026年に飲食店がとるべき行動は?
さらに2026年に重要になるのが、新たな施策を導入する際の採算ラインを事前に数式で把握することです。
インバウンド対応や予約媒体、多言語メニューなどは「必要そうだから」「他店がやっているから」と感覚的に導入されがちですが、本来は投資回収の見通しを立てたうえで判断すべきです。
たとえば、
追加投資(月額)が「予約媒体費3万円+多言語メニューの償却1万円=計4万円」かかる場合、最低でもこの4万円分の追加粗利を生み出せなければ、施策は赤字になります。
このとき必要な追加粗利は、
追加粗利=(インバウンド客数の増加 × 客単価 × 粗利率)
で計算できます。
逆算すれば、
必要客数=4万円 ÷(客単価 × 粗利率)
となり、「月に何人増えれば元が取れるのか」が明確になります。
この1式を持っているだけで、「なんとなく良さそうな施策」か「現実的に回収できる投資」かを冷静に判断できます。2026年の飲食店経営では、売上インパクトの大きさよりも、その施策が確実に採算ラインを超えるかどうかを見極める視点が、利益を守る分かれ道になります。
まとめ|2026年は「選ばない勇気」が経営を救う
2025年の外食市場は回復基調でしたが、その内側では店舗間の差が確実に広がっています。
インバウンド、値上げ、新サービス導入──すべてをやる必要はありません。
自店の立地・客層・体制を踏まえ、「やらないこと」を決める判断こそが、2026年の経営を安定させる鍵となるでしょう。