【飲食店経営】つぶれない店が必ずやっている3つの経営シミュレーションと開業計画の立て方
【売上シミュレーション】売上が想定の70%になったらどうなるか?
飲食店の開業相談を受けていると、よくこんな言葉を耳にします。
「立地はいいです」
「コンセプトには自信があります」
「原価率は抑えられています」
もちろん、どれも大切です。
しかし、2年後に残っている店と、静かに姿を消していく店の差は、そこではありません。
違いはシンプルです。
“うまくいかなかった場合”を想定しているかどうか。
成功の計画は誰でも立てます。
けれど、本当に強い店は「最悪のケース」を具体的にシミュレーションしています。
今回は、「つぶれない店」が必ず行っている3つの経営シミュレーションをご紹介します。
飲食店を開業する際、多くのオーナーが「美味しい料理を出せば、きっとお客さんは来てくれる」という情熱を原動力にスタートします。
しかし、経営という冷徹な現実の前では、情熱だけでは家賃も人件費も払えません。
実際、飲食店が開業から2年以内に廃業する確率は約50%。
この明暗を分けるのは、料理の腕以前に「オープン前にどこまで数字をシミュレーションできているか」です。
今回は、特に個人開業で多い10〜15坪・約20席規模の飲食店をモデルに、「つぶれない店」が必ず行っている3つのシミュレーションを深掘り解説します。
【収支計画の基準】飲食店経営で絶対に超えてはいけない「FLR比率70%」の防衛ライン
まず最初にやるべきなのは、
売上が想定の70%だった場合の損益計算です。
多くの事業計画は「目標売上ベース」で作られています。
例:
月商300万円想定
原価30%
人件費25%
家賃10%
一見、問題なさそうに見えます。
しかし、もし売上が210万円(70%)だったらどうでしょう?
原価は売上比例で減りますが、
家賃やリース代は変わりません。
人件費もすぐには下げられません。
結果、利益は一瞬で消えます。
つぶれない店は、
「売上が未達でも耐えられる設計」になっています。
- 固定費が重すぎないか
- リース契約が過剰でないか
- 人員体制がスリムか
重要なのは、「攻めの数字」ではなく、「守りの数字」です。
| 業態 | 想定客単価 | 目標回転数 | 1日の売上目安 | 成功の鍵 |
| ラーメン・定食 | 900円 | 5.0回転 | 約90,000円 | ランチで2.5回転を死守できるか |
| カフェ・喫茶 | 800円 | 3.0回転 | 約48,000円 | テイクアウトで客数を上乗せ |
| 居酒屋・バル | 4,000円 | 1.5回転 | 約120,000円 | ドリンク比率をいかに高めるか |
| カジュアルイタリアン | 6,000円 | 1.0回転 | 約120,000円 |
予約管理と食材ロスの徹底排除 |
「3つのシナリオ」でリスクを見える化する
売上予測を1パターン(望的観測)だけで作るのは自殺行為です。
必ず以下の3つのシナリオを月次(30日稼働)で算出し、通帳の残高と照らし合わせてください。
・強気シナリオ(120%):理想の絶頂
全時間帯で満席、週末は行列。メディア露出が成功した際の状態。
・標準シナリオ(100%):損益分岐点のクリア
上記の表に基づいた、計画上の着地点。ここを目指して集客を行う。
・悲観シナリオ(50%):地獄の想定
連日の雨、記録的な猛暑、近隣の競合店オープン、あるいが感染症の再流行。
この「悲観シナリオ」に耐えられない計画は、開業後わずかなトラブルで資金が底をつきます。
② 「FLR比率70%」という、絶対に超えてはいけない防衛ライン
利益を出すために必要なのは、「いくら売るか」以上に「どの割合でお金が出ていくか」という比率管理です。飲食店経営には、絶対に守らなければならない「魔法の数字」が存在します。それがFLR比率です。
FLR比率の内訳
- F(Food)|食材原価:目安30%
- 35%を超えると、利益がほぼ残らなくなります。「こだわり」と「原価率」のバランスをメニューごとに微調整する必要があります。
- L(Labor)|人件費:25〜30%
- ここには「店主自身の生活費」も必ず含めてください。自分の給料を削って利益を出しているのは、経営ではなく「ボランティア」です。
- R(Rent)|家賃:10%以内
- 売上の10%以内に家賃を収めるのが健全経営の絶対条件です。もし家賃20万円の物件なら、月商200万円が必達目標となります。
【FLR合計 = 70%以内】
これが「つぶれない店」の鉄壁の防衛ラインです。残りの30%から、水道光熱費、広告費、消耗品費、そして「利益」が生まれます。
損益分岐点を「精神安定剤」にする
「最低いくら売れば、赤字にならないか」を把握していないオーナーは、毎日不安に苛まれます。以下の式で、自分の店のデッドラインを割り出しましょう。

つまり、月売上114万円でようやく利益が「0」です。
これ以下の売上は、利益が出ていないのではなく、「あなたの貯金を毎日削って営業している」という残酷な事実を認識しなければなりません。
③ 初期投資を「100万円削る」ための優先順位
開業失敗の典型例は、「内装と新品の厨房機器にお金をかけすぎて、手元に運転資金が残らない」ケースです。
通帳にある100万円を「豪華な内装」に使うか、「現金」として手元に持つかで、半年後の生存率は劇的に変わります。
【優先順位別】コストカット・チェックリスト
| ランク | 項目 | 判断基準 |
| A:削ってはいけない | 電気・ガス・給排水・厨房動線 | インフラは後から直すと工事費が3倍かかる。動線の悪さは一生の人件費増を招く。 |
| B:中古・代替を検討 | 厨房機器・家具(椅子・机) | コンロやシンクは中古で十分。椅子はDIYや中古のリペアでコストを1/3に抑えられる。 |
| C:後回しでいい | 高機能POS・過剰な装飾 | 最初はiPadレジで十分。飾りや予備の食器は、メニューが固まってから買い足せばいい。 |
「理想の店」を作ることが目的になってはいけません。「長く続く店」を作ることが、オーナーとしての最大の使命です。
結論:あなたの「情熱」を「数字」で守る
「美味しいものを作れば、お客様は分かってくれる」
それは決して間違いではありません。しかし、その想いが街の人々に届き、リピーターで溢れるまでには、どうしても「認知の壁」を越えるための時間がかかります。
その壁を越えるまで店を持ちこたえさせるのが、数字に裏付けられた経営計画です。
開業前に必ず再確認したい「3つのチェック」
①最悪の想定ができているか?
悲観シナリオでも家賃と返済が払えるキャッシュがあるか
②利益構造は健全か?
FLR比率が70%以内に収まるメニュー構成になっているか。
③現金は残っているか?
見栄を捨てて100万円削り、それを「安心」という名の運転資金に回せているか。
「つぶれない店」とは、特別な才能や奇跡的な立地がある店ではありません。
最悪を想定し、それでも続けられる準備ができている店です。
あなたの情熱を一時の挑戦で終わらせないために。数字と向き合うことから開業準備を始めてみてください。
