2025/06/30

外食市場、5月は前年比110.8%と好調持続 GWとインバウンド需要が下支えに

目次

外食売上、GWと万博効果で前年比110.8%の伸長

2025年5月の外食市場は、前年同月比で110.8%と大幅なプラスとなり、42カ月連続で前年実績を上回る結果となった(日本フードサービス協会調べ)。この背景には、5月初旬のゴールデンウィークによるハレ需要と、大阪・関西万博の開催が重なり、外食機会が増加したことがある。

今年のゴールデンウィークは飛び石連休となったものの、むしろ近距離での外出需要が増え、地域密着型の外食店舗では高い集客を記録した。さらに、訪日外国人観光客(インバウンド)需要が引き続き活況を呈し、特に大阪や京都、奈良といった関西圏のターミナル駅や観光地立地の飲食店舗では顕著な売上増が見られた。

加えて、原材料価格や人件費の高騰が続くなか、多くの事業者が価格改定を実施しているが、消費者側でもその背景に対する理解が進み、価格上昇に対する許容度が高まりつつある。これにより、客単価は前年比105.6%と伸びている一方で、来店者数(客数)も104.9%と堅調を維持している点は注目に値する。

 

【💡ポイント】

  • ✔GW効果と万博需要で売上前年比110.8%

  • ✔客単価5.6%上昇でも客数4.9%増を確保

  • ✔42カ月連続のプラス成長で回復基調が定着

ファストフードと中華業態が売上を牽引

業態別では、ファーストフード(FF)業態が前年比111.8%と市場を牽引した。なかでも洋風カテゴリーでは、人気キャラクターとのコラボレーション商品や、お得な価格設定のランチメニューが奏功し、115.2%と高い伸びを記録した。これは若年層やファミリー層に訴求した商品企画が的中したことを示しており、商品開発とプロモーションの連動が売上増に寄与しているといえる。

一方で、和風ファストフードでは、週替わり定食などバリエーションに富んだメニュー展開が奏功し、109.9%の売上増となった。また、麺類業態では暑さの到来とともに冷たいメニューの需要が伸び、うどんチェーンを中心に無料トッピングの拡充も評価され、111.1%の成長となった。

ァミリーレストラン業態(FR)は全体で110.4%と堅調に推移し、とくに中華(116.3%)や和風(111.4%)のカテゴリーが目立って好調だった。中華では割引キャンペーンやセットメニュー訴求が客数増に直結しており、和風ではとんかつ専門店などが訪日観光客による需要を取り込むことで高成長を実現している。

【💡ポイント】

  • ✔FF111.8%、洋風FFは115.2%と突出

  • ✔中華ファミレス116.3%、和風もインバウンドで111.4%

  • ✔トッピング・冷メニュー・コラボ企画が売上増を後押し

 

平日ランチとインバウンドが客単価・売上の安定要因に

ディナーレストラン業態では、前年比108.0%と堅調な結果となった。

なかでも平日ランチの充実によって昼間の集客が改善されており、加えて、大阪・関西万博に関連する宿泊需要の恩恵を受けたホテル立地の店舗では、インバウンド需要の取り込みが売上増に直結している。

喫茶業態も109.7%と前年を大きく上回る結果に。とくに関西の駅構内や繁華街など、アクセスの良い立地でインバウンドの集客効果が見られ、価格改定による客数減の影響は限定的であった。

一方で、パブ・居酒屋業態は104.8%と他業態に比べて伸び率が低かった。これは、5月前半の天候不順による集客の停滞が影響したと見られるが、月後半にはインバウンドによる利用回復が見られた。日本フードサービス協会の分析では、「客単価が上がっても客数が落ちない傾向が続いている」とされる一方で、「一部では値上げによる離反も目立ってきている」として、事業者間での明暗が分かれてきている様子も示唆されている。

【💡ポイント】

 ✔ディナーレストラン:平日ランチ拡充+ホテル立地でインバウンド需要直結し前年比108.0%
✔ 喫茶:駅ナカ・繁華街で訪日客を取り込み価格改定の影響を最小化し前年比109.7%
✔ パブ・居酒屋:前半悪天候で停滞も後半インバウンドで回復、値上げ離反で明暗分かれ前年比104.8%

現場の工夫が功を奏す、柔軟な価格・商品戦略が今後の鍵に

5月の市場動向から見えてきたのは、値上げを含む価格調整と、それを補完する形での“お得感”の演出や柔軟なメニュー構成が売上増の鍵となっている点である。

たとえば、トッピングやサイズ選択、定食形式の導入など、単一商品でもバリエーションを出すことで、限られた食材でも高い満足度を提供できる施策が実を結んでいる。

また、外国人観光客をターゲットにした多言語メニューやキャッシュレス決済の拡充といった“インバウンド対応のインフラ整備”も、飲食店の競争力を高める要素として無視できない。

飲食業界全体として、回復基調にあるとはいえ、原価や人件費の上昇は避けられず、価格調整の舵取りには慎重な判断が求められる。そうした中でも、顧客の体験価値を高める創意工夫が、来店動機の喚起と再訪率の向上に繋がっていることは間違いない。

今後の市場変化に対応するためにも、価格戦略、商品構成、販促施策を三位一体で見直し、自店の立地特性やターゲットに合わせた柔軟な対応が求められる時代となっている。

【💡ポイント】

  • ✔値上げ+“お得感”演出で客離れを抑制

  • ✔トッピング・サイズ展開でリピート動機を創出

  • ✔キャッシュレス・多言語メニューでインバウンドを取り込む

〈参考記事〉

・外食産業市場動向調査 2025年5月度結果報告 一般財団法人日本フードサービス協会

まるっと飲食情報局-1

宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。
宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。