飲食店の開業時に入るべき保険を解説|備えるべき3つのリスクとは?

飲食店を経営する際、避けて通れないリスクがあります。火災や水害、食中毒や労災など、どれも予期しないタイミングで訪れる可能性があり、その影響は計り知れません。飲食店を営業するにあたって、どんな保険が必要なのか、そしてその選び方を知っておくことが重要です。この記事では、飲食店が直面する3つのリスク—損害リスク、休業リスク、賠償リスク—と、それぞれに対応する保険の種類について詳しく解説します。万が一の事態に備えるための最適な保険選びのポイントもお伝えするので、ぜひご一読ください。
飲食店を取り巻く3つのリスク
飲食店を取り巻くリスクは、「損害リスク」「休業リスク」「賠償リスク」の3つに分けられます。すべてのリスクを保険で備えておくことは現実的ではありません。日常的な対策に加えて、万が一のことが起こっても冷静に対処できるよう補償内容を検討することが求められます。
損害リスク | 店舗の建物や設備、備品、商品などが何らかの被害を受ける可能性を指します。たとえば、火災や落雷、水害といった自然災害により店舗が損壊したり、ガス爆発や水漏れなどの偶発的な事故による被害が考えられます。また、盗難や破壊行為によって窓ガラスが割られたり、器具が盗まれたりするケースも含まれます。 |
休業リスク | 店舗が営業を停止することで売上や利益に影響が出るリスクを指します。たとえば、火災や水害による店舗の損壊や、食中毒などのトラブルが原因で営業を一時停止しなければならない場合、収入が減少する可能性があります。 |
賠償リスク | 第三者に損害を与えた場合に発生する責任のことです。たとえば、建物の看板が落下して歩行者に怪我をさせた場合や、従業員がサービス提供中に誤って顧客の衣服や物品を損壊させた場合がこれに該当します。また、調理や製造した商品が原因で食中毒を引き起こし、顧客に損害賠償を請求されるケースもあります。 |
飲食店で押さえておくべき保険とは?
1. 火災保険
飲食店の火災保険は、火災や風災、水災、落雷、盗難などによる設備や什器の損害を補償します。ただし、補償内容はプランによって異なるため、契約時に確認が必要です。飲食店は厨房で火を扱うため火災リスクが高く、火災保険への加入は不可欠です。また、自店舗で火を使わない場合でも、近隣店舗からの出火リスクに備える必要があります。火災事故を完全に防ぐことは難しいため、万が一に備えた保険加入をおすすめします。
2. PL保険
PL保険(生産物賠償責任保険)は、製品や業務が原因で他者に損害を与えた際の賠償を補償する保険です。1995年施行の製造物責任法(PL法)により、製品の欠陥で被害を受けた場合、製造元や販売元に過失がなくても損害賠償を請求できるようになり、導入が進みました。飲食店も対象で、料理は「加工」に該当するため、食中毒などで損害賠償責任を負う可能性があります。万が一に備え、PL保険に加入することでリスクを軽減できます。
3. 施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、店舗設備の欠陥や従業員のミスで事故が発生し、お客様に損害賠償責任が生じた際に補償する保険です。飲食店では、スープをこぼして火傷を負わせたり、飲み物で衣類を汚すなどのトラブルがよく見られます。これらに対する治療費や慰謝料、クリーニング代などの負担を補填します。賠償金は高額になることが多く、飲食店には欠かせない保険といえます。
4. 店舗休業補償保険
店舗休業補償保険は、突発的な休業で収入が減少した際に補償を受けられる保険です。休業中でも賃料や正社員の給与、水道光熱費は発生し、支払いが続くと経営が破綻するリスクがあります。この保険は、火災や風災、盗難などが補償対象となる場合が多いですが、経年劣化や短時間の停電、地震・津波・噴火による損害は対象外です。保険会社や商品によって補償範囲が異なるため、複数を比較して契約するのがおすすめです。
5. 労働保険
労働保険は労災保険と雇用保険を指し、事業主は従業員を1人でも雇用すれば加入義務があります。労災保険は通勤中や退勤中の事故での負傷や死亡に対する治療費や遺族給付金を補償します。一方、雇用保険は正社員は必須加入で、パートやアルバイトは週20時間以上働き、31日以上雇用される場合に加入義務が生じます。ただし、学生のパートやアルバイトは原則として対象外です。加入義務を怠ると法律違反となるため注意が必要です。
6. 店舗総合保険
店舗総合保険は、火災保険やPL保険などを幅広く補償する保険です。自然災害や設備の損害、デモによる営業停止なども対象となり、飲食店が直面する多様なリスクに対応できます。また、単独で複数の保険に加入するよりコストを抑えられる場合もあり、経営者にとって安心な選択肢です。ただし、野外の物品の盗難などは対象外となるため、事前の確認が重要です。幅広い保障が必要な店舗にはおすすめです。
保険の選び方
予期せぬリスクから事業を守るためには保険加入が重要ですが、すべての保険に加入する必要はありません。保険料と補償内容のバランスを考え、必要な保険を選びましょう。また、テナント契約時には指定保険がある場合もあるため、事前に確認が必要です。
1. 業種・業態に合った保険の選定
店舗の立地や規模、従業員数によってリスクは異なります。例えば、路面店は浸水のリスクが高い一方、空中店舗では排水管の不具合による被害が懸念されます。自店舗の状況をよく考慮し、必要な補償内容を備えた保険を選ぶことが重要です。
2. 補償内容と保険料のバランス
保険の契約時には、補償内容と保険料のバランスをチェックすることが大切です。保険会社によって提供される補償内容は異なり、追加特約が必要な場合もあります。月々の保険料が適正かつ必要な補償を備えているかを確認し、無駄な支出を避けましょう。
3. 定期的な保険の見直し
保険は一度契約した後も、定期的に見直しを行う必要があります。新たな店舗をオープンしたり、保険の更新や年度切り替え時に再確認することで、現状に最適な保険内容に変更できます。また、休業明けのタイミングでも見直しを行い、リスクに対応した保険を確保しましょう。
まとめ
飲食店を取り巻くリスクは「損害リスク」「休業リスク」「賠償リスク」の3つです。これらに備えるため、火災保険やPL保険、施設賠償責任保険、店舗休業補償保険を活用することが重要です。保険を選ぶ際は、業態や店舗の状況を考慮し、補償内容と保険料のバランスを確認することが求められます。定期的に見直しを行い、最適な保険を確保することで、予期せぬ事態にも冷静に対応でき、店舗運営を安心して続けられます。