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2025/07/16
昼とんかつ店営業、夜居酒屋修業を2年間続け、念願のリアル店舗をオープン

5月1日、東京・自由が丘に“とんかつ酒場”をうたう食事処「GOEN」がオープンした。場所は自由が丘駅正面口からカトレア通りを北方向に徒歩3分ほどのビルの2階。人通りの多いエリアである。同店を運営するのは㈱Gardenia(本社/東京都目黒区)で、アイキャッチの人物が代表の横瀬純也氏(29歳)。横瀬氏は、希少な豚の「ルイビ豚(ぶた)」の食味の高さに傾倒して、この豚肉を使った店舗運営を志して、この度念願のリアル店舗をオープンした。
自由が丘のカトレア通りに面した2階にあり、自然光がふんだんに入る開放的な店内
「とんかつ店」の間借り営業を2年間継続する
横瀬氏は山梨の出身で、服飾デザイナーを志して横浜の大学のデザイン科に進んだ。そこで居酒屋でアルバイトをしたところ、この仕事の面白さに心酔するようになる。担当する賄いは一緒に働くスタッフから「おいしい」と好評を得るようになり、お客とのコミュニケーションを取って喜んでいただく日々を重ねていき、「飲食業で生きていく」ことを決意するようになった。
大学卒業後は、とんかつの「新宿さぼてん」を展開する㈱グリーンハウスフーズに入社した。とんかつのテイクアウト店からはじまり、新店の立ち上げや大箱の店長を歴任した。ここでは「会社から求められることにコミットする力を育むことができた」と横瀬氏は語り、社内のアワードを数多く受賞した。
横瀬氏は、同社に入社した段階で「30歳で独立しよう」と独立起業のスタートラインを決めていた。そこで、グリーンハウスフーズで習得した「とんかつ」をつくる技術を生かそうと考えた。物件の内見も始めていたが、「リアル店舗を構えることは、資金的にまだ現実的ではない」と考えて、しばらくの間は「間借り」で店舗を運営することにした。
グリーンハウスフーズを退職して、2023年5月、「創作とんかつGOEN」の屋号で東京・祐天寺に最初の間借り店舗を構えた。自分がやりたい業態は居酒屋であったが、自分が最も得意としている「とんかつ」をメインに、ランチ業態から取り組むことにしたという。このランチ営業の店は、評判を呼んで、リピーターも増えていった。
専門店の店名は、店名に店が扱う料理名を打ち出すことが一般的だが、「GOEN」の場合は、間借り営業の時代から「ご縁」を名乗っている。これは横瀬氏が飲食業界と出合ったことから始まり、飲食業で自らのフィールドを切り拓いてきた過程の中で、多くの人々との「ご縁」に感謝しているから、とのこと。横瀬氏の独立起業に対する真摯な姿勢を伺うことが出来る。
夜は秀逸な居酒屋でノウハウを育てる
一方で、将来「居酒屋」を構える夢を温めていた。自分で、居酒屋営業の構想を進める上でさまざまな居酒屋をベンチマークしていた。これらの経験から、「最も感動した」という居酒屋「渋谷きんぼし」を運営する㈱マルホ(本社/東京都渋谷区、代表/池上善史)にお世話になり、夜の時間帯に居酒屋営業のノウハウを学ぶようになった。同社の新店の立ち上げにも関わり、また横瀬氏の発案で「とんかつイベント」を開催して、好評を得るようになった。
左が「ルイビ豚」の「ひれかつ」、右が同じく「ロース」。断面からジューシーな肉質が伝わる
横瀬氏は「マルホ様では、池上代表をはじめとてもエネルギッシュなメンバーの方々との“ご縁”をいただき、とても勉強になった」と振り返る。
ランチ営業の間借り店舗は、祐天寺から三宿、そして神泉へと移転した。横瀬氏のとんかつは、どの店舗でも評判を得るようになり、リアル店舗の開業資金も整うようになった。
YouTubeに『令和の虎』という番組がある。これは2001年10月から2004年3月まで日本テレビで放送された『マネーの虎』の後継といった趣旨の番組で、起業家と投資家が向かい合い、起業家が投資家に出資を求めてプレゼンするという内容。開業の構想を温めていた横関氏は、2024年の秋にこの番組に挑戦した。
横瀬氏が描く業態は「居酒屋以上、割烹未満」。このプレゼンを行なった結果、希望金額の「650万円」を獲得することが出来た。そこで、起業家の人たちから貴重なアドバイスをいただく。「とんかつをメインに打ち出すのであれば、居酒屋業態ではなく食事業態がいいのではないか」と。それまで横瀬氏は、夜の居酒屋に比重を厚くした業態を考えていたが、これらを参考にして食事の比重を増した業態を組み立てるようになった。
物件は、目黒区、渋谷区、世田谷区をメインにして検討するようになった。当初は10坪程度の物件を想定していたが、将来的に店舗展開をしていく構想を抱いていて、想定していた規模の倍以上となる22坪の現在の物件に決めた。駅に近く人通りが多く、所得の多い住宅が広がることから「売上の伸びしろは大きい」と考えた。
満足度の高いとんかつの「商品力」を打ち出す
食事処「GOEN」のメインの食材である豚肉は、静岡の富士農場サービスが飼育する「ルイビ豚」と「富士デュロック」を使用。中でも「ルイビ豚」は年間生産量1000頭という希少なブランド。この最大の特徴は、融点が32度と人間の体温より低いことから、揚げたてをかむと「じゅわっ」と、旨味の深い肉汁が口の中に広がる。「富士デュロック」は脂のコクとさっぱりとした後味が特徴で、ジューシーで柔らかな食感を楽しめる。
とんかつに合うアルコールドリンクの品揃えを豊富にしている。こちらは「宇和島檸檬サワー」700円
看板メニューは、ルイビ豚を使用した「かつ御膳」で、「ロースかつ御膳」2850円、「ひれかつ御膳」2950円となっている。また、近年人気メニューとして定着してきている「とじないかつ丼」も、同店では「ルイビ豚とじないかつ丼」3200円をラインアップしている。ふわとろの卵とサクサクの食感を楽しむことが出来る。
夜の居酒屋営業では、食事メニューに加えておつまみも多数ラインアップ、クラフトビール、日本酒、焼酎、ワインと品揃えを豊富にしながら「とんかつに合うお酒」の提案に余念がない。
現状の客単価はランチ2000円、ディナー4000円弱のあたり。代表の横瀬氏をはじめ、スタッフの全員が、接客時に料理説明を詳しく行い、お客とのコミュニケーションが密になるように心掛けている。営業が本格化して1カ月と緒についたばかりだが、店を育てようとする熱心な姿勢が感じられて、自由が丘エリアに定着してものと期待される。
スタッフとのチームワークがよく取れて、お客への料理説明などを丁寧に行なっている