2025/07/16

元気寿司がベトナム初進出!ホーチミンで高速レーン寿司と現地アレンジの融合戦略を展開

目次

ベトナム市場に“高速レーン寿司”初登場、元気寿司が進出第一歩

2025年6月27日、株式会社Genki Global Dining ConceptsのフランチャイジーであるGENKI SUSHI(VIETNAM) CO., LTD.が、ホーチミン市中心部にある大型商業施設「Saigon Centre」の5階に、「Genki Sushi Saigon Centre」を開業した。

日本の寿司文化を代表する“回転寿司”の進化系として、同社が展開する「高速レーン寿司」は、注文後に専用レーンで高速提供されるシステムが特徴である。メニューは140種類以上に及び、サーモン・マグロといった定番の寿司に加え、ベトナム風スパイシーソースや明太マヨなど現地に合わせたアレンジ寿司、さらにはライスペーパーを使用した特製ロールなど、ベトナム市場向けに最適化された商品設計がなされている。

この出店により、元気寿司はタイ、インドネシア、中国などに続く東南アジアでの新たな一手を打ち、経済成長著しいベトナムの中間所得層をターゲットに据えた拡大戦略を本格化させている。

 

ベトナム進出が加速する日本の飲食チェーン、その理由とトレンド

近年、ベトナムには多数の日本系飲食チェーンが進出しており、その背景には安定した経済成長、若年層の多さ、日本文化への親和性の高さがある。

例えば、「丸亀製麺」(株式会社トリドールホールディングス)は現地向けの味付けやプロモーションで集客に成功しており、「すき家」(株式会社ゼンショーホールディングス)はライス量や味付けカスタマイズなどの柔軟性で高い支持を得ている。そのほか、「coco壱番屋」(株式会社壱番屋)は現地の米やスパイスを活用した独自のカレーを提供し、「ラーメン一風堂」(株式会社力の源ホールディングス)は高価格帯ながら現地富裕層と日本人 expatriates を取り込む戦略を展開している。また、「サイゼリヤ」や「ロイヤルホスト」もベトナムに店舗を構え、ファミリー層やカジュアルな外食ニーズに応えている。

このような環境に元気寿司が参入した背景には、「高品質な日本食」への期待値が高まっていることに加え、店舗オペレーションの効率化や現地化メニュー戦略を導入しやすい“寿司”という業態の柔軟性がある。

 

元気寿司の現地対応施策から学べるヒントとは?

元気寿司が打ち出す「高速レーン寿司」は、客単価の最適化と回転率の向上を同時に狙える仕組みとして注目される。

また、メニュー設計にもベトナム市場特有の要素が取り入れられており、例えばライスペーパーを使った「サーモンスプリングロール」などは、ヘルシー志向とエスニック食材の親和性を両立させた一品である。

さらに、シェフのキエット氏は20年以上日本食に携わっており、現地人ならではの味覚理解と日本料理の技術を併せ持つ点が強みだ。寿司に使用されるサーモンやマグロは高鮮度で提供されると同時に、炙り、スパイシーソースなどの“ひと手間”を加えることで差別化が図られている。こうしたオリジナリティとオペレーション効率の両立が、他の中小飲食業者にとっても有益なモデルとなるだろう。

特に注目すべきは、限定メニューやプロモーション施策である。オープン記念としてサーモン寿司を特別価格で提供したり、ギフトバッグ配布や無料クーポン施策を実施することで、新規顧客の集客と口コミ形成を強化している。これは「高品質かつ手頃な価格」という同ブランドのコアバリューをより明確に顧客へ伝える戦術である。

 

【海外進出成功の条件】現地化和食と柔軟なオペレーション設計がカギ

ベトナムのような成長市場では、「日本食」というブランド力に依存するだけでなく、ローカル要素との融合が求められている。

元気寿司のように、現地素材や現地シェフの感性を取り入れることで、文化的ギャップを埋めた形の商品開発が可能になる。これにより、単なる“輸入された日本食”ではなく、“現地化された和食”としての位置づけを確立できる。

他の飲食店においても、この手法は応用可能である。例えば、ラーメン店であればベトナム特産のハーブやフォーとの組み合わせ、うどん店であれば現地野菜の天ぷらとの組み合わせなど、オリジナリティと市場適応力を兼ね備えたメニュー開発が鍵を握る。また、客単価やピーク時間を見据えたオペレーション設計、キャンペーン施策による“最初の一歩”の集客戦略も重要である。

日本国内市場が飽和する中で、海外展開は飲食業者にとって避けて通れない選択肢となっている。ベトナムのような新興市場で成功するには、食材・サービス・提供方法・価格設計の各要素で現地の生活文化にどこまで寄り添えるかが鍵である。元気寿司のような先行事例から、柔軟かつ戦略的なアプローチを学び、各社の海外展開に活かしていくべきだろう。まるっと飲食情報局-1

 

宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。
宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。