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2025/07/23
10年以上前に一斉を風靡した「俺の~」ブランドが、再び動き出した

2011年9月、新橋にいまだかつてない斬新なお店がオープンした。店名は「俺のイタリアン」。オープンした当初は目立った動きはなかったが、10月、11月と日増しに店頭に長い行列が出来上がっていった。同店の場合「1時間待ち」が当たり前になった。
同店の何が斬新なのか。それは、高級なレストランで活躍していた一流の料理人が料理をつくり、高級店の価格の3分の1で提供するというもの。フードの原価率は60%を超えるが、これを立ち飲みのスタイルにして、お客を回転させることによって、これまでの常識にない数字をつくり上げた。この「俺のイタリアン」は、16坪でピーク時に1910万円を売り上げた。
2011年の「俺のイタリアン」新橋本店の店頭の様子。これ以降、新橋・銀座界隈で、店頭に行列が出来る「俺の~」の店舗が数多くみられた
同店は、中古書籍の販売店である「ブックオフ」創業者で、起業家の坂本孝氏のアイデアによって生まれたもの。「世の中が不景気とは言え、ミシュランの星付きのレストランと立ち飲み居酒屋が流行っている。この二つをくっつけよう」という発想で誕生した。
この業態は、その後「俺のフレンチ」「俺の割烹」「俺のやきとり」という具合に、料理ジャンルごとのブランドを増やしていく。しかしながら、コロナがやって来て、一時期の話題性は静かになった。「あの『俺の~』は、その後どうしているのだろうか」。かつて盛況であった「俺の~」を知る人にとっては、その後を案じている人も多いのではないだろうか。
その「俺の~」は、いま活発に動いている。アイキャッチの人物三人はその重要な人物。中央が、俺の株式会社代表取締役社長の立石寿雄氏、左が同社スーパーバイザーの橋本健太郎氏、右が「俺の炉ばた 恵比寿」料理長の岡田雅也氏である。これは「俺の~」にとって久々の新業態として「俺の炉ばた」の5月28日の記者発表に撮ったものである(オープンは5月29日)。
「三方良し」の企業文化を推進する
「俺の~」が再び活発に動き出すようになったのは、アイキャッチの中央、立石氏が代表に就任してからだ。立石氏は投資ファンドのネクスト・キャピタル・パートナーズ株式会社(以下、ネクスト)の代表を務めていて、2024年7月に同社が「俺の」の全株式を取得したことから代表に就いた。
ネクストでは、2023年6月に外食企業のオリーブ株式会社を取得していて、24年7月に取得した「俺の」と同年11月に合併した。そこで、「俺の」では旧オリーブの物件を「俺の~」の店舗に転換するなど、活発な動きに拍車をかけるようになった。新規出店も行なっている。2025年5月末の段階で、総店舗数は65店となっている。
2024年の暮れからの「俺の~」の出店を見ると、まず、11月30日「俺のビストロ渋谷」(東京)がオープン。25年に入り、1月23日「俺の焼肉 心斎橋」(大阪)、2月27日「俺のフレンチGRILL&WINE秋葉原」(東京)、3月15日「俺の焼肉 博多」(福岡)、そして、5月29日に「俺の炉ばた 恵比寿」と「俺のフレンチ・イタリアン 恵比寿」が同時オープンした。
今年2月秋葉原にオープンした「俺のフレンチGRILL&WINE秋葉原」の外観。旧オリーブの店舗から業態転換したもの
「俺の~」の出店を活発に進めている立石体制であるが、立石氏は「俺の~」の魅力と展望について、このように語っている。
「創業者は偉大なるアイデアマンですね。飲食業の数値は、原価率30%、人件費30%、家賃10%という具合に固定的で当たり前になっていたが、ここに新しいビジネスモデルをつくり上げた」
「ただし、ここには継続して儲けるという視点を欠いていたようです。このビジネスモデルが、だんだんと『儲かる』という状態に至らなくなったのは、お客様にとって、潜在的に食事はゆったりと食べたいという想いがあったからではないでしょうか。そこで、多くの人のニーズから離れていったのではないでしょうか」
「『俺の~』の場合は、大多数のお客様が感じられる『おいしさ』の水準を十分に超えています。客単価は『俺のフレンチ・イタリアン』で4000円から5000円、『俺の焼肉』だと6000円から7000円、『俺のやきとり』だと3000円あたり。この客単価の範囲で『また、食べに行きたい』と思っていただいています」
「私は『三方良し』ということを、企業文化として大切にしていきたい。つまり、お客様も、業者様も、従業員も、喜んでいく関係性を大切にしていくということです」
創業者の坂本氏が切り拓いてきた「俺の~」のブランドの知名度は圧倒的なものであり、その安定したクオリティは、多くの人々から改めて支持されるものと考えている。
「俺の」にとって11年ぶりの和食新業態
さて、「俺の」が「11年ぶりの和食新業態」と標榜する「俺の炉ばた」は、和の伝統的な「炉ばた」業態である。オープンキッチンの中央に、炉を設けて、魚、肉、野菜を焼いて提供する。シンプルな料理であるが、調理する風景はダイナミックで、ライブ感を楽しむことが出来る。
この5月にオープンした「俺の炉ばた」のオープンキッチンの様子
店舗は、恵比寿駅西口方面で飲食店が立ち並ぶ一体にあり、駅から徒歩で2~3分。同店はビルの2階で26坪・42席の規模、1階に「俺のフレンチ・イタリアン」がある。
同店は、おすすめメニューとして「炉ばた名物 大海老原始焼き」1078円、「大トロ鰯 原始焼き」1738円、「幻の特大椎茸 天恵菇(てんけいこ)」1078円、「希少黒毛和牛 東京ビーフの炭火焼き」3278 円(150g)、「愛知県産一色うなぎといくらの土鍋ご飯」4378円、「炉ばたで焼き芋 アイス添え」748円を掲げている。想定する客単価は6000円から7000円という。
同店が営業するエリアは、お客が目的来店する個性的な飲食店が立ち並んでいる。その中でも、「俺の~」のブランドが発信する安定したクオリティは、「安心して食事を楽しむことが出来る」というイメージをもたらして、お客からすぐに認知がなされるものと思われる。
「俺の炉ばた」の料理の数々。特徴がはっきりと下上質の食材をシンプルな味付けで調えている
ここの動画で「俺の炉ばた」を開発した経緯について説明している橋本氏は、新卒で創業者の坂本氏が率いるブックオフに入社した人物。入社してすぐ、坂本氏に「飲食業をやりたい」と坂本氏に進言して、それをかなえてもらった。そして、坂本氏がブックオフから離れて、「俺の」の前身の飲食業を立ち上げたと同時に、この会社に入社した。この橋本氏のように、「俺の」のプロパーが、いまの「俺の」の勢いを支えている。
「俺の~」ブランドの新規出店は、これから新宿、浅草と続いていて、現在の新体制によって、親しみやすい「カジュアルレストラン」としてのブランド力は、再び高まっていくことであろう。

