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画期的な「90分制」飲み放題による高い生産性で続々と出店

今、首都圏でなかなか予約が取れない焼肉チェーン店がある。「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」がそれだ。1号店として昨年12月横浜西口店をオープンして以来、渋谷、新宿三丁目といった飲食店がひしめく立地で展開しているが連日大繁盛だ。この11月16日に本厚木店(FC)をオープンして7店舗となっている(うちFCは3店舗)。12月には3店舗がオープンし、出店計画は2月まで立てられている。今日の新型コロナ禍にあって、異例のヒット業態と言えるだろう。
目次
「0秒レモンサワー」がきっかけとなるリピートする仕組み
同店を展開しているのはGOSSO株式会社(本社/東京都渋谷区、代表取締役/藤田建)。同社はこれまで首都圏、東海、関西、海外(シンガポール)において、ビルの空中階でカジュアルレストランや居酒屋を展開してきた。
まず、同店の概要を紹介しよう。
フードメニューは「名物 塩ホルモン」380円、「“肉塊”レモン牛たん」1490円、「ときわ亭カルビ」790円を「オススメ!!」として推していて、ロースターを使用するメニューだけでもカテゴリーとして「豚 厳選ホルモン」「牛 厳選ホルモン」「厳選牛」「豚/鶏」「山賊焼き」がある。さらに「ときわ亭本家 つけ冷麺」890円を推すなど食事メニューも豊富にあり、品目数は約90に及ぶ。
次にドリンクメニュー。店名についた登録商標である「0秒レモンサワー」が同店の最大のポイントだ。同店の各テーブルにはタップが取り付けられていて、お客は自前でサワーをジョッキに注いで飲むことができる(レモンのシロップが10種類あり、その中の2種類を選ぶ)。ただし、条件がある。この飲み放題は60分500円で、延長する場合は30分300円。最大席利用時間は90分だ。またこの飲み放題を注文すると480円のビール(中ジョッキ)を1杯目190円で飲むことができる。
他のドリンクも豊富で、アルコールが約20品目、ソフトドリンク7品目がラインアップされている。

このような圧倒的な数のメニューと「0秒レモンサワー」がフックとなっている。
GOSSO代表取締役の藤田建氏は「ときわ亭の持ち味を把握するためには5回程度来店する必要がある」と語るが、「0秒レモンサワー」の楽しさが刷り込まれると、「今度はこんな食事にしよう」という具合にリピートする動機をもたらす。公式アプリ会員になってリピーターとなると幕下から関脇、大関という具合に位が上がっていき、それぞれに特典が付与される。
現状、客単価は3000円(税込)、標準店舗は25~30坪・50~60席で、横浜西口店が10月度月商1300万円、渋谷店が1200万円、他の店舗もこれに近い売上をマークしている。
M&A戦略から転じてパートナーシップを結ぶ
同店が誕生したきっかけは2~3年前のこと。当時、藤田氏は100店舗100億円を目指して成長エンジンとなる業態を探していた。
この構想はM&A戦略となっていくが、そこで巡り合ったのが仙台の「仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」(以下、ときわ亭)であった。同店は食肉流通会社に勤務していた加藤栄一氏が2005年に仙台市内の一番町にオープンし、繁盛店となって宮城県下でチェーン展開を行っていた。
藤田氏は仙台の「ときわ亭」に足しげく通うことになるが、同店の商品力の高さを日増しに確信するようになった。

その後構想を進めるうちに、お互いのウィンウィンを模索するようになり、全く互角のパートナーシップを結ぶことになった。
藤田氏は「全国展開をして100店舗100億円を目指す」ことが狙いであり、加藤氏は「ときわ亭のブランドを全国に広げたい」という想いがあった。
そこで、GOSSOでは宮城県以外で「ときわ亭」を展開する権利を持ち、同店で使用する食材を仙台の「ときわ亭」の食肉工場が供給するという取り決めを行った。
藤田氏は、これから全国展開を行うためには既存の「ときわ亭」の商品力に加えて店内に仕掛けをつくりたいと考え、各テーブルにレモンサワーのタップを設けることを考えた。そこで「0秒レモンサワー」の商標を登録した。店名が「0秒レモンサワーⓇ 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」と長くなっているのは、仙台の「ときわ亭」のブランドに、GOSSOの登録商標を付けているからである。ちなみにGOSSOでは「0秒ハイボール」の商標も登録している。
GOSSOが展開する「ときわ亭」では商品開発を独自に行うことが可能で、本家の加藤氏もこれに参画している。商品は約90品目が存在するが、このうちの3割程度はGOSSOサイドのオリジナルである。インスタ映えする「“肉塊”レモン牛たん」1490円や「レモン牛たんカーペット」1290円などがそれに相当する。

企業文化や業態開発での可能性が広がる
GOSSOにとって「ときわ亭」は新しい可能性をもたらした。
まず、出店立地。同社のこれまでの店舗は4階以上の空中階であることが多く、お客も予約して来店するパターンが多かった。さらに、クローズドキッチンで従業員にとって顧客接点が少なかった。一方、この業態は地下1階ないし2階に出店しているので専用階段や窓外などにファサードをつくることができる。そこでフリーのお客がどんどんやって来る。オープンキッチンにしていることで、このようなお客から自分たちがどのように評価されているかが分かりやすく伝わる。サービスの意義について考える機会が増える。
藤田氏はこう語る。
「当社のミッションは『人生に潤いを!ハピネス&スマイル創造カンパニー』、ビジョンは『世界No.1のサービスをつくる、成長し続ける未来創造ベンチャーになる!』というものです。『ときわ亭』を展開するようになってから、これらを体現できるようになった」
さらに、「0秒レモンサワー」という顧客満足度の高い装置を持つことができたことによって、新たな業態づくりの可能性は広がっている。
メニューから焼肉を外して、「B級グルメ酒場」といったスタンスでフードメニューに餃子、唐揚げ、たこ焼き、焼きそばなどをラインアップし、これらのテイクアウトも想定している。これらの店舗は5~10坪といった小箱店を想定している。この場合は、軽装備で済み、少人数での運営が可能だ。実際に横浜・野毛に「0秒レモンサワー」の6坪の店舗を出店しているが、現状月商210万円程度を売り上げている。

「ときわ亭」にとって最も望ましい25坪~30坪の物件はなかなか上がってこない。焼肉店はビルオーナーがNGを出す場合が多い。「B級グルメ酒場」の営業を行うことによって物件獲得数が飛躍的に増えることが期待できる。
冒頭で出店予定が目白押しであることを述べたが、これはFC出店を希望する経営者が多いことからだ。
FCの条件は、加盟金が坪数×10万円、ロイヤリティ3%、補償加盟金が坪数×5万円。加盟金の上限が300万円、つまり30坪以上の人は300万円、下限が100万円で10坪以下の人は100万円、そこで坪数が大きな地方都市で出店する場合は有利と言えるだろう。
既存のFCオーナーや加盟希望者は既に3~5店舗の飲食店を展開している30代の経営者で、新型コロナ資金を投資する、というパターンが多い。藤田氏は「既存店のエリアで同じブランドを展開すると競合してしまう。では、焼肉か焼鳥か専門店を手掛けてみたいが、専門店を開発することは簡単なことではないので、加盟店になった方が早く出店できると考えている人」とまとめてくれた。
さて、藤田氏の計画では2024年度までに100店舗、チェーン売上100億円と想定している。新型コロナ禍にあっても事業計画を見通すことができる業態をつくり上げたことはまさに慧眼であるが、すべては2~3年前にM&A戦略を打ち出して動いていたことが今日の状況に現れている。
