SDGs達成に向けて飲食業界ができること-目標4.質の高い教育をみんなに-
近年、「持続可能」「サステナブル」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。ニュースやテレビのCMでもSDGs(持続可能な開発目標)について述べられているのを見かけます。SDGsとは、貧困や飢餓、ジェンダー平等など世界的に取り組むべき課題を選定し、解決のために定めた国際目標です。全部で17個ある目標のうち、今回は「目標4.質の高い教育をみんなに」についてご紹介します。
目標4は一見、飲食業界との関連が薄いように感じますが、「食育」という観点から考えると取り組むべき課題と言えます。目標4と食育の関係性、そして、飲食業界からできることについて考えていきます。
目次
「目標4.質の高い教育をみんなに」とは
目標4は「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」をテーマに、10の指標が定められています。
文部科学省の「文部科学統計要覧(令和2年版)」によると、2019年の義務教育の就学率は約100%となっており、日本では基本的な教育にアクセスできる状態にあると言えます。しかし世界に目を向けると、後発開発途上国では男性17%、女性20%の子どもたちが学校に通うことができておらず(出典:UNICEF「世界子供白書2019」)、解決すべき重要課題と言えます。
日本では達成できているように感じますが、その他のSDGsに定められている目標などに関して、各々が自分ごととして取り組めるようになるには、持続可能な社会づくりのために必要な考え方や知識を学ぶ必要があります。そのために、内閣に設置されたSDGs推進本部では、SDGs達成に向けて日本政府として重点的に取り組んでいく事項をまとめた「SDGsアクションプラン」を2018年以降毎年発表しています。2019年からは優先課題の一つとして「食育の推進」が挙げられています。
国民の健康や日本の食文化を守る「食育」
「SDGsアクションプラン」で優先課題とされている「食育の推進」とは、どのようなものなのでしょうか。
文部科学省によると、食育で身に付けることは、下記のように記されています。
・食べ物を大事にする感謝の心
・好き嫌いしないで栄養バランスよく食べること
・食事のマナーなどの社会性
・食事の重要性や心身の健康
・安全や品質など食品を選択する能力
・地域の産物や歴史など食文化の理解など
引用:文部科学省
これは、子どもたちが「食」に関して勉強する際の指標ですが、食事は生きる上で欠かせないものであるため、食育はあらゆる世代の国民に必要なものと言えます。というのも、食べたものが私たちの体を作り、将来にわたる健康に密接な関わりを持っているからです。
「目標3.すべての人に健康と福祉を」に関する記事でも述べましたが、栄養改善を行うことは健康維持につながります。食育を社会に根差すことは、国を挙げての重要課題と言えるのです。
目標3について詳しくはこちら→「SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標3.すべての人に健康と福祉を-」
日本食はヘルシー食として世界的にも認知されており、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。そんな日本食にどのような食育が必要なのか疑問に思う方もいるかと思いますが、近年、日本では食の欧米化などにより、理想的な栄養バランスと言われる一汁三菜といった日本独自の食スタイルが消えつつあります。主食と主菜のみという栄養が偏った食事を取ることで、医療や介護を日常的に必要とせずに生活できる健康寿命と平均寿命の差は広がり、生活習慣病の引き金にもなっています。健康のために、世界に誇る日本食という文化を残すために、食育に関する活動を行い、次世代に引き継いでいく必要があります。
自分で、地方自治体の主催するイベントで食育活動を
食育を通じて、次世代に引き継ぐために、どのような取り組みが考えられるでしょうか。個人で実施するのは難しい印象ですが、飲食店にとっては、それほどハードルが高いわけではありません。
店内ポップやSNSで、自店のメニューで使用している食材の栄養素の表示や歴史的背景、仕入れ地の特性などを紹介するのも食育の一つです。食育用に新メニューを開発したり、期間限定で特別メニューを提供するという方法もあります。食事を提供することで、栄養バランスの良い食事への意識を高めてもらえる取り組みを行いたいですね。
アイドルタイムに子どもたちを集めて料理教室を開催している飲食店もあるようです。料理教室を通じて、食べ物の大切さや栄養のとれた料理を3食取ることの重要性、食文化などについて伝えることができます。作った料理を食べる際に、食事をする時のマナーも学べます。地元の食材を使用しているという飲食店では、お付き合いのある生産者の方と連携して、地域の特産品についての説明や収穫体験なども併せて行うと、より食べ物の大切さを感じていただけるのではないでしょうか。
内閣府は毎年6月を「食育月間」と定めており、地方自治体では6月前後に食育に関連するイベントを多く開催しています。例えば、野菜嫌いの子どもたちが克服できるように考慮されたメニューや高齢者にとって食べやすいメニューを提供するイベントなどです。他にも、自治体が募集する食育応援店舗に加盟して食についての発信を行うほか、自治体の食育講座で講師を務めるなどの方法で参加が可能なようです。店舗展開エリアの自治体で、どのようなイベントを実施しているのか、参加できるものがあるか確認してみましょう。
自治体が運営する食育イベントに参加することで、自店舗だけでは難しい活動も地域の方々と協力しながらできるため取り組みやすいですね。
また、食育イベントを行うことは、飲食店にとってもメリットがあります。自店のPRにつながりますし、参加者から口コミが広がり、地元の方々に愛用していただけるようになる可能性があります。日常の業務に追われ、なかなか食育イベントへの参加は難しいという現状もあるかと思いますが、社会貢献につながるだけでなく、地域の方に自店を知ってもらうチャンスでもあります。イベントへの参加や実施を検討してみてはいかがでしょうか。
「目標4.質の高い教育をみんなに」の重要課題である教育は、食育という観点で、飲食業界にとっても重要な取り組みであることが分かりました。自店舗で発信を行うほか、食育イベントに参加することで、子どもたちをはじめとした地域の方々に食の大切さや食事の栄養バランスについて伝えていきましょう。そうすることで、SDGsの達成につながるばかりか、日本食という文化を次世代に伝えていけます。
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