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2021/04/07
プラントベースドミート専門の未来型ハンバーガー店兼肉屋「The Vegetarian Butcher」【SDGs×飲食業界】
近年よく耳にするようになったSDGs(持続可能な開発目標)。貧困や飢餓、環境問題など地球規模で取り組む必要がある課題について定めた国際目標ですが、飲食業界でもSDGs達成に向けての取り組みを行う店舗が増えてきています。
今回は、東京・池袋にあるハンバーガー店「The Vegetarian Butcher」(運営/株式会社ベジタリアンブッチャージャパン、代表/村谷幸彦氏)をご紹介します。
同店が注目に値するのは、料理で使用しているお肉がすべてプラントベースドミート(植物由来の原料でつくられた肉で、食肉などと比較して環境への負荷が少ない)ということです。従来の食肉の生産システムが抱える問題(動物福祉、健康問題、貧困問題、環境問題)を解決するため、肉屋としてプラントベースドミートの販売もしています。加えて、プラスチック製品の不使用や売り上げの一部をNPO法人に寄付するなど、SDGsに関連する取り組みも積極的に実施しています。
それらの取り組みやお店に関して、代表取締役の村谷幸彦氏にお話を伺いました。
―プラントベースドミートに関心を持ったきっかけを教えてください。
前職で飲食店に勤務していた際に、野菜ソムリエの方と知り合う機会がありました。
その方はベジタリアンだったため、タンパク質を摂取するためにテンペ(インドネシア発祥の大豆などを発酵させて固めたもの)を食べているということでした。健康に良いというので、実際に試してみたところ私の口には合わず……。
植物性タンパク質で、私にもおいしいと感じる物があるのではないかと調べてみることに。リサーチを進めるにつれフードテック(※1)の面白さ、今後の可能性を感じるようになり、世界中のフードテック企業について調べました。そこで見つけたのが、オランダに本部があり、世界的な規模で事業を行っている「The Vegetarian Butcher」です。
(※1)フードテック:フードとテクノロジーを掛け合わせた言葉。テクノロジーを用いて、新たな食品や調理法を開発していくこと。
―どうして「The Vegetarian Butcher」に注目したのですか?
同社はプラントベースドミート商品を開発し、販売を行う食品メーカーでした。見た目はもちろん、味も食感も、動物性の食肉と遜色ない上に、欧州の厳しい衛生基準をクリアしているという点に興味を覚えたのです。
実は、他にもフードテック企業数社にアプローチしたのですが、最も日本市場に対して前向きで、私自身も可能性を感じたのは同社でした。国内での専売契約に向けて動き、2年かけて締結。日本での販売代理店として「The Vegetarian Butcher」の商品の販売を開始しました。そして、2020年8月にはプラントベースドミートを提供する飲食店を出店しました。
―どうして飲食店を出店されたのですか?
日本では、まだまだプラントベースドミートの認知度が低いため、実際に体験して、考えてもらう場を設けたかったからです。それには、プラントベースドミートを使用したハンバーガーや料理を実際に食べてもらうのが最適だと考え、飲食店を出店することにしました。併せて店舗ではプラントベースドミートの量り売りも行っています。
あまり意識することはないかもしれませんが、お肉が私たちの食卓に上るまでは、畜産動物の飼育・飼料の製造・輸送など、さまざまなシーンで地球温暖化の原因となる二酸化炭素を多く排出しています。大豆を主原料とするプラントベースドミートなら、食肉よりもはるかに環境に与える影響が少ない上に、ベジタリアンや宗教的背景などからお肉を食べることができない方にも楽しんでいただけます。
そのプラントベースドミートを専門に取り扱う「The Vegetarian Butcher」のブランド世界観を伝えるためにも、店舗ではサステナブル(持続可能)な取り組みを積極的に行っています。
―サステナブルについては元々関心があったのですか?
最初はまったくありませんでした。プラントベースドミートだって調べてはじめて、環境にとって優しいものだということを知ったくらいです。「The Vegetarian Butcher」の本部があるオランダは環境先進国で、人々は通勤に自転車を利用するなど、国民一丸となってサステナブルな取り組みを実施しています。契約などのために何度も現地を訪れる中で、環境に配慮した行動を多々目にし、意識が徐々に変化していきました。
例えば、食品の包装がとてもシンプルです。オランダ本部の量り売りのプラントベースドミートを購入すると、包装は紙1枚だけでした。日本で量り売りのお肉を購入すると、木材を薄く切った紙のようなものに包んだ後、さらにビニール袋に入れるか、包装紙で巻いて提供されます。包装が紙1枚だけということは見たことがありません。最初は私もこれだけでいいのかと驚いたほどです。
―店舗ではサステナブルな運営として、どのようなことを意識していますか?
一つはアーバンファーミング(都市空間の隙間を利用して行う農業)です。食材などを遠い場所から輸入すると、近隣と比べて物流過程で二酸化炭素をより多く排出してしまいます。環境のためにも地産地消に取り組む必要があると私は考えています。
ですが、東京などの都心部は農地がないため、農業をすることが難しいと言われています。人口が多く、たくさんの食材を消費しているのですから、都心や近郊で食材を栽培するのは重要課題です。アーバンファーミングなら、空きスペースやビルの屋上などで農業を行うため、コンクリートジャングルの東京でも十分に作物を栽培できます。
実際に、店舗の空きスペースを利用して、当社でアーバンファーミングによる野菜などの栽培を行っています。店舗でそのアーバンファーミングの様子をご覧いただけますし、栽培した食材は調理してお客様に提供してもいます。
地産地消について詳しくはこちら→SDGs達成に向けて飲食業界ができることー目標13.気候変動に具体的な対策をー
―他にもサステナブルな取り組みをしていますか?
食品ロス削減に取り組んでいます。食品ロスにはお客様側から出るものと、お店側から出るものとの2種類があります。
お客様の食べ残しによるロスを削減するために、お持ち帰り用として用意している「TO GO BOX」は、サステナブルを意識してプラスチック容器の利用を控えています。
また、お店側の廃棄をなくすために「フードシェアリングフリッジ」というものを用意しています。店舗に冷蔵庫を用意し、店内で余ってしまった食材、ミスやキャンセルとなった料理などを入れておき、来店された方が自由に無料で持ち帰れるようにしています。毎回、閉店までにはすべてお持ち帰りいただけています。
プラントベースドミートの普及だけでなく、このようなSDGsに貢献できる取り組みを実際に体験していただくことで、お客様が環境などについて考えるきっかけになれればと思っています。
食品ロスについて詳しくはこちら→SDGs達成に向けて飲食業界ができること ー目標2.飢餓をゼロにー
―今後についてはどのようにお考えですか?
今後はビジネスにおいても、ライフスタイルにおいても、環境や社会への配慮を前提としなければならず、それをスタンダードにする必要があると考えています。日本のSDGsに関する認知度はまだまだ高くないため、店舗での取り組み以外にもインターネット上で発信を行っています。
とりわけ、これから社会を担っていくZ世代(1990年代後半以降に生まれた世代)をターゲットとしており、若い世代の人々の生活にこの考え方を浸透できるようにマーケティングを行っています。
―Z世代に向けた取り組みについて、今後、何か実施する予定はありますか?
Z世代のライフスタイルにアプローチする方法として、当社の取り組みを意識してもらえるように、当社ロゴをプリントしたTシャツなどのアパレル商品の販売も企画しています。ロゴのプリントには、廃棄食品から染料を抽出した天然染料を使う予定です。他にも、この天然染料を使ったパーカーやキャップといったアパレル商品などの販売を考えています。Z世代により意識してもらうために、店舗でサステナブルな取り組みに関してお客様に積極的に伝えていきたいと思います。
また、将来的には食品ロスを集めたレストランをオープンしたいとも考えています。食品ロスとなりそうな食材を店舗に集めて料理を提供し、お客様には月額のサブスクリプション制(※2)のような形でご利用いただくというイメージです。
他にも、当店で実施できるサステナブルな取り組みがあれば、取り入れたいと思っています。今後も、弊社が環境に配慮した行動について考えるきっかけとなるような存在を目指していきます。
(※2)サブスクリプション制:個々の商品に対して費用を支払うのではなく、月額など一定期間の利用権を販売するというもの。
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