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2024/07/11
24歳で独立、川崎ドミナントで繁盛店を展開
近年、川崎駅前の歓楽街の様相が変化してきている。かつて大箱居酒屋が目立っていたが、
個性的な飲食店が増えてきた。商品に専門性があり、売り方にこだわった店が多く、これらを梯子する楽しさがある。
そういう点では、ここで紹介する株式会社サンライズ(代表取締役/菊池厚志)は、川崎を変化させた一翼を担う存在としてその意義は大きいと認識している。
目次
就活の段階で、飲食業で独立することを目指す
サンライズは2014年川崎に「串揚げ 華火」をオープンして以来(同店はその後売却)、「串揚げ とろろ鍋 華金」、「和ビストロHANABI」、「鮮魚と炉端焼き 魚炉魚炉」、「炉ばた家 〇銀」を出店、現在川崎に4店舗を展開している。
代表取締役の菊池厚志氏は、1990年3月生まれ、川崎市内でそば店を営む家庭で育った。菊池氏よると、飲食業は子供のころからとても身近な存在であったが、その商売をしようとは思っていなかったという。
高校を中退した後、川崎の工業エリアで働いた。塗装業、とび職などさまざま仕事を経験したが、「自分にとって仕事が長続きしないことを他人の責任にして、職を次々と変えていった」という。
そんなある日、友人たちが就職活動をしている様子に遭遇した。「みんな将来のことをちゃんと考えているんだ。自分も就活しないと……」と思うようになった。
「就職するのであれば、自分がこれまで働いてみて一番楽しかったことをやってみよう」と考え、高校時代にアルバイトをしていたジンギスカン専門店の仕事がとても楽しかったことを振り返り、「飲食業界に進んで将来独立しよう」と考えた。
そこで串カツのチェーンの店に就いた。この業種にしたのは、大阪を訪ねた時に串カツの文化が根付いていることに感動したこと。また「今としては浅はかな発想ですが」と前置きして、「いろいろな食材を使用ながら一つの調理法で提供できるから簡単だ」と考えたからだ。
居酒屋甲子園に参画し、QSCの磨き方を学ぶ
そして、「そろそろ独立を」と考えていた頃に、川崎や都内で飲食店を展開していた型無株式会社代表取締役の矢野潤一郎氏と出会った。矢野氏からは「独立するのであれば、まずうちの会社に入って、修業してから業務委託の形で始めたらどうか」と勧められた。
型無に入社した菊池氏は同社が展開する店舗を回り、22歳の時に「串揚げ 華火」を東京・学芸大学に業務委託の形でオープンした。この店では、飲食店経営におけるあらゆるノウハウを学んだという。
1年ほど営業した後、地元・川崎で商売をしてみたいと思うようになり、川崎に直営で「串揚げ 華火」をオープンした。菊池氏は24歳であった。
現在、同社の取締役である反町真平氏がパートナーとなり、同社のサービスのブラッシュアップやメニュー作成で菊池氏を支えた。
菊池氏は型無の矢野氏からの誘いもあり居酒屋甲子園の活動に参画するようになった。メンバーの事業規模が菊池氏のものと近いことから、共感できることがたくさんあったという。
同社の店を訪ねてみるとQSCのレベルの高さに感動するのだが、このような飲食店のあるべき姿をつくりだすことには、居酒屋甲子園で学んでいった。
「飲食業で独立する人は、センスがあって独立する人、頭脳派で独立する人、勢いだけで独立する人という具合に3つのタイプに分けられて、自分はこの3番目、勢いだけで独立するタイプ。こんなことでは駄目だな、と思っている時に、いろんな人から教えてもらう機会に恵まれました」
収益性の高い「ろばた焼き」業態を生み出す
菊池氏に多くの学びをもたらした株式会社國屋社長の國利翔氏と出会ったのも居酒屋甲子園であった。居酒屋大サーカスが新潟で開催された2016年6月に現地で出会った。
國利氏は東京・西新宿で大繁盛の炉端料理店「ろばた 翔」を経営している。その繁盛ぶりに感動し、國利氏に「うちも炉端焼きの店をやりたい」と相談したことから、サンライズの料理長、坂内賢吾氏に10日間の修業に向かってもらった。炉端焼きでの食材の扱い方から、メニュー設計に至るまで全てを同店から学んだ。
こうして誕生したのが2018年1月にオープンした「魚炉魚炉」である。
まず、同店ではお通しとして「本日の鮮魚5点盛」を500円で提供しているが、メニューの中に刺し身はない。それはお通しで刺し身を提供することによって、お客様には「鮮度のよい魚を使用している」という印象をもたらす。これは「ろばた 翔」から学んだことだ。
実際に、魚介類の焼き物、煮物のクオリティは高い。これには卸業者と密接に交流していることの賜物である。例えば、ラインに「明日ホタテ1枚180円」という情報が送られて来て良い食材を安く仕入れる仕組みができている。
バランスの取れた商品設計でFLコスト54%に育てる
同店では、これらに加えて利益を生み出す仕組みを整えている。
先のお通しは単品原価率70%となっていてお値打ち感が高く、端材を「ギョロパッチョ」780円や「青唐のなめろう」680円などに活用することでロス削減と原価率の低減につなげている。「青唐のなめろう」は、辛みのあるなめろうの上に卵黄を置いて味を滑らかにして、それを海苔に巻いて食べてもらうというもの。酒が進む人気商品となっている。魚の出汁で煮込んだ「煮どうふ」290円のように魚のアラを活用した粗利益の高い商品も開発している。
主力商品の炉端焼きでは、鮮魚は一本で提供し、食べ方は「塩焼き」「煮つけ」「アクアパッツア」と3種類から選んでもらう。こうすることによって、前回は塩焼きで食べたから今日は煮つけにしよう、といった動機をもたらす。
名物の「吉次(キチジ)の塩焼き」3000円の単品原価率は高いが、原価率を押さえた野菜の炉端焼き280~580円によってバランスを取っている。鮮魚では必ず一種類高級魚を入れている。
名物おばんざいも原価率が抑えられ、7品から3品を選ぶ「3種盛」680円も売れ筋となって粗利益をもたらしている。
アルコールは680~980円で提供する日本酒15種の品揃えが目を引く。猪口は青森のハンドメイドのガラス製のものを籠に入れてお客様に選んでもらう。日本酒は錫の入れ物で提供。さらに、レモンサワーをはじめ酎ハイのラインアップを豊富にしている。チェーン店にはない品揃えで、グラスに「NO FISH NO LIFE」と入れたり、インスタ映えや遊び心をアピールしている。
店内で遭遇する一つ一つに、お客様が喜ぶことと利益を上げる仕組みの創意工夫が十分に練り込まれていることに気付く。
これらで同店は客単価4200円、12坪26席で月商450万円を売り上げてFLコストは54%ととても高い利益体質となっている。
5店舗目も川崎に出店、地元密着を深める
「魚炉魚炉」以外の店舗規模と客単価は以下の通り。「串揚げ とろろ鍋 華金」は19坪、客単価4000円。「和ビストロ HANABI」は16坪、客単価3500円そして、「炉ばた屋 〇銀」は45坪、客単価3500円。このように低価格で訴求する店はない。
菊池氏はこう語る。
「当社の客単価は3500円より下がらないようにしています。それは、飲食店は食事がおいしいことが重要だと考えているからです。特に川崎の場合は食事のレベルを上げると『あの店は間違いないよね』という感じでお客様から一目置かれます。その点、他のエリアから川崎に出店するところが増えてきてきました。川崎に食事のレベルを上げた店で勝負するという具合です」
菊池氏は居酒屋甲子園の活動に参画することによって、さまざまの地方の経営者と交流をするようになり、経営に対するアイデアが広がってきていると認識している。特に、居酒屋甲子園で「サービスに力を入れる」ことを学んでから、客単価を上げつつもの満足度の高い商品づくりや接客のあり方について研究するようになった。
「当社は3店舗から4店舗になったことで、マネジメントが弱いということを痛感した」とも語るが、これも居酒屋甲子園で交流する中で、あるべきマネジメントの在り方が見えているからこその感慨であろう。
また、川崎のいさご通りに路面40坪の物件を手配済で、2020年3月にオープンする予定だ。
菊池氏の店を磨き上げていく姿勢が、同時に近年顕著になってきた川崎の新しい魅力をもたらしているのであろう。