2025/05/14
「3分の1ルール」見直しで市場が変わる?飲食店に求められる柔軟な仕入れ戦略

公正取引委員会、「3分の1ルール」に独禁法違反の可能性を示唆
2025年5月、公正取引委員会は、食品業界で長年慣習となっている「3分の1ルール」に対し、「独占禁止法違反となるおそれがある」との見解を示した。このルールは、食品の賞味期限の3分の1が経過するまでに小売業者が商品を仕入れるという流通慣行であり、主にスーパーなどの小売業界で適用されている。
メーカーや卸売業者と十分な協議を行わず、一方的に小売側が取引条件を設定している場合、公正な取引を妨げる行為として問題視される可能性が高い。
3分の1ルール見直しの背景にあるフードロス削減と取引適正化
今回の見直しは、社会問題化しているフードロス削減の観点からも注目されている。まだ十分に消費可能な食品が、流通段階で大量に廃棄される現状を是正する狙いがある。公正取引委員会は「取引の適正化を図る」として、流通構造の改善を求めている。
一方で、飲食業界においては、このルール緩和が仕入れコスト削減の好機と捉えられる半面、現場運営に新たなリスクをもたらす可能性がある点に注意が必要である。
【仕入れリスク増大賞味期限短縮による在庫管理負担
「仕入れコストが下がる」という期待とは裏腹に、賞味期限の短い商品を多く扱うことで在庫管理の負担が増すリスクが懸念される。特に、回転率の低いメニューを提供する店舗では、使用期限までに食材を使い切れず、結果としてフードロスの拡大につながりやすい。
さらに、管理が行き届かなければ品質劣化や衛生リスクが生じ、顧客クレームやブランドイメージの毀損を招く恐れもある。飲食店経営においては、単なる仕入れ価格の安さだけでなく、ロスやクレーム対応といった“見えないコスト”にまで目を向ける必要がある。
「3分の1ルール」の緩和によって市場には賞味期限の短い商品が増え、仕入れ判断の難易度はむしろ高まるだろう。安さだけに目を奪われれば過剰在庫やロス発生のリスクが高まり、特に日配品や加工食品を多く扱う業態では、より慎重な仕入れ判断が求められる。
【飲食店が今取るべき対応】リスクを抑える3つの実務ポイント
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✅仕入れ基準の明確化
賞味期限の短い商品の仕入れにあたっては、使用予定日や消費スピードを精査し、明確な基準を設けることが重要である。 -
✅保存技術の活用
真空パックや冷凍保存技術を積極的に活用し、食材ロスを最小限に抑える体制を構築することが求められる。 -
✅ロス発生リスクの事前シミュレーション
仕入れ価格だけでなく、実際に使用・販売できる数量を基準にした粗利計算を行い、安易な仕入れに伴うリスクを回避することが肝要である。
仕入れコストの低下に安易に飛びつくのではなく、自店舗の業態やオペレーションに即した冷静な判断がこれまで以上に重要となる。経営環境が厳しさを増す中、仕入れ戦略の見直しが今こそ求められている。
