連載「コロナ後、飲食業はこう変わる」第4回――タクシーがデリバリーをする街ぐるみの事業構想

 

『e店舗media』で執筆している千葉哲幸が、コロナ禍の中で新しい試みを行っている飲食業の事例を見てきている。テイクアウト・デリバリーだけではなく異業種を手掛けたことで、中小も大手も事業領域を豊かにしている。そこで連載の形で、「コロナ禍での新しい取り組みによって、飲食業はどう変わるか」ということを述べていく。

 

テレワーク時代に備えデリバリー事業を推進

宮城県仙台市内を中心に飲食店を19店舗展開している(株)ハミングバード・インターナショナル(本社/仙台市青葉区、代表/青木聡志、以下ハミングバード)では、仙台中央タクシー(株)(本社/仙台市宮城野区、代表/神田博志)と提携してタクシーを利用したデリバリーサービスの「タクデリ」を4月15日からスタートした。

タクシーでの商品配達は、本来のタクシー業務を妨げない範囲内で、役務提供などを行う救援事業の「便利タクシー」制度(平成元年国土交通省通達)を活用して実施するものだ。

これ以前にハミングバードでは、テレワークが増える傾向の中でデリバリーの事業化を想定していて、昨年10月の消費税引き上げを機に仮想店舗によって「ハミングバードデリバリー」を行っていた。

ここではバイクを5台用意して対応していたが、さらに需要が増えることを感じている中でタクシー業界の知人から、「タクシー業界も利用客が減っている」ということを伺い、ハミングバードと仙台中央タクシーとの間で「タクデリ」の構想を温めるようになった。

「タクテリ」の利用の仕方は以下のようになっている。

・2000円以上からお届け(別途、送料が500円かかる。2店舗に注文すると2店舗分の送料がかかる)。

・支払方法は、現金またはPayPay。

・営業時間は、9時~21時(年中無休)。

・注文は、まずお客さまが直接、仙台中央タクシー配車センターに電話(TEL.0570-057-818)、「タクデリの注文」と伝える。

・次に、オペレーターの案内に従い、〈チラシを見ながら〉①住所(配達エリアの確認)、②店舗名(店舗記号)、③商品番号、④個数、⑤名前、⑥電話番号を伝える。

・商品の受け取りは、まず、配車センターから到着の連絡が入り、家の近くに来ているタクシーまで取りに行く。

・現金またはPayPayで支払う。――これで受け取りは完了となる。

また、主なただし書きとして以下の項目がある。

・商品は注文をいただいてから調理しているので、配達まで45分~1時間30分程度かかる。

・事前予約の場合は、時間指定も可能。などである。

注文した人は家の近くまで来ているタクシーに商品を受け取りにいく

ハミングバードでは、4月21日~5月6日まで19店舗の全店が休業。デリバリーのメニューは同社の4ブランドでそれぞれのキッチンで調理する。和食・洋食・中華・アジア料理・スパニッシュ&イタリアンとバラエティに富んでいる。

4月29日段階で、代表の青木聡志氏は「この試みは、仕込み段階」と述べて、平日は10~20件、週末には40件ほどの利用があるという。現在増える傾向を見せていて、これからチラシのポスティングなどの告知によって利用増を促していきたいとしている。

ハミングバードと仙台中央タクシーの試みはフィージビリティスタディ(実現可能かの事前調査)として、5月からは料理をつくる飲食店や、デリバリーを行なうタクシー業者の登録を増やし、これによってデリバリーのエリアも拡大する。街をあげてのアフター・コロナの事業の一つとして動き出しそうだ。

さて、ハミングバードでは5月7日から少しずつ店舗営業を再開してきている。5月9日から仙台銘菓の「萩の月」(菓匠三全)も「タクデリ」で購入できるようになった(対象商品のフードメニューを2000円以上注文が必要)。このようにタクシーによるデリバリーは主に地方都市でインフラになっていくかもしれない。

5月9日より仙台銘菓「萩の月」もデリバリーできるようになった