2025/06/27

【朝で差がつく飲食経営!】“科学派”吉野家ד感性派”ロッテリアのモーニング大改革!

目次

「モーニング×飲食」が注目される背景

朝食市場は、単なる腹を満たすだけでなく、健康志向・機能性・食感など多様な価値軸で進化している。

特に“モーニング”メニューは、飲食店にとって朝の来客を左右する重要戦略となってきている。

本記事では、吉野家とロッテリアの最新施策を通じて、飲食業界が取るべき「朝食戦略」を検証する。

吉野家:朝定食が「脳活性」!? 科学的エビデンスを武器に新たな訴求へ

吉野家(株式会社吉野家ホールディングス)は東北大学ナレッジキャスト株式外車・株式会社NeUと共同で、同社の朝定食が脳活動および自律神経に与える影響を検証し、その成果を2025年6月に『日本栄養・食糧学会誌』に発表した。

研究は54人の成人男性を対象に、吉野家の朝定食とパン食を比較する8週間のクロスオーバー試験を実施。

結果として、

 

  • 脳の前頭前野の血流量が有意に増加(認知機能の活性化)

  • 心拍数が増加し、交感神経が優位に(自律神経が活性化)

  •  

という効果が確認された。

単なる栄養補給ではなく、朝に定食を食べることが、その後の活動の質を高めるという機能的側面が明確に示された点で、飲食業界における朝食の価値再定義と言える。

ロッテリア:ふわもち系マフィンで“食感重視”のモーニング刷新

一方、ハンバーガーチェーンのロッテリア(株式会社ロッテリア)は2025年7月にモーニングメニューを刷新し、オリジナルマフィンやサンドを中心に全11品を展開。主力商品は以下の通り:

 

  • ソーセージエッグマフィン(340円):ふわもちマフィンに、スパイシーなソーセージとぷるぷる卵をサンド

  • トマト&レタスソーセージマフィン:野菜との組み合わせで朝にうれしい栄養設計

  • BLTエッグサンド(390円):自社製ベーコンと卵を使用したバランス重視の一品

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「ふわもち」という食感キーワードを前面に打ち出し、パン系朝食の魅力を感性面から高めている

さらに、ドリンクやハッシュポテトと組み合わせたセット提案も行うことで、「朝からしっかり食べたい」というニーズを広範に取り込んでいる。

 

科学性と感性のアプローチ比較で見える、モーニング戦略の2極化

吉野家とロッテリアの施策を比較すると吉野家は“機能性×科学性”を軸に、ロッテリアは“食感×感性訴求”を中心にしたアプローチであることが分かる。

吉野家は研究機関との連携によって「朝食の効果」という機能的価値を訴求しており、ロッテリアは味や食感を通じて「気持ちのいい朝」の体験価値を演出している。

価格帯も異なり、吉野家の朝定食は500円〜700円前後の構成でボリュームと栄養重視、ロッテリアは軽食的で300〜400円台に抑えた選択肢が中心。

客層としては、吉野家が働き盛りの中高年層に焦点を当てる一方、ロッテリアは若年層や女性のライトユーザーも取り込もうとする意図が見て取れる。

こうした差異は、それぞれの業態や立地、ブランド戦略によるものであり、同じ「モーニング強化」であっても方向性が大きく異なる点が興味深い。

他飲食店はどの要素を取り入れるべきか

他の飲食店がこの2つの事例から学べるポイントは多い。

まず吉野家のように、朝食がもたらす健康や集中力への好影響といった「生活改善」への貢献を打ち出すことは、付加価値の創出につながる。とくに、ビジネスマン向けやシニア層をターゲットにする場合、こうした科学的裏付けのあるメニュー設計やプロモーションは信頼感を与える施策となる。

一方で、ロッテリアのように食感・見た目・手軽さに訴える戦略は、競合が多いカフェ・ベーカリー系業態でも差別化しやすい。特に「ふわもち」など擬音語を活用した商品名・販促は、感覚的に伝わりやすくSNS映えも狙える要素だ。朝の時間帯は急ぐ客も多いため、「軽さと満足感の両立」や「ワンハンドで食べられる設計」も効果的だろう。

モーニングは「朝の集客」から「1日の価値創出」へ

かつてのモーニング施策は、午前中の閑散時間を埋めるための手段として位置づけられることが多かった。

しかし現在では、「朝から価値ある体験を提供すること」が、1日全体のブランドイメージ形成やリピート動機の創出に直結する。吉野家が示したように「朝定食が脳を活性化する」という新しい価値は、単なる一食を超えて、ライフスタイル提案としての意味を持つようになった。

飲食店にとって、モーニングメニューは単なる“早朝の補完施策”ではなく、“一日の最初に提供するブランド体験”だ。

今後は、他業態でもこの時間帯の再設計が進む中で、「科学性」「感性」「時短性」「食感」など、様々な要素を組み合わせた高付加価値型モーニングの提案が競争力の鍵を握るだろう。

吉野家のリリースはこちら

ロッテリアのリリースはこちら

まるっと飲食情報局-1

宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。
宮原康助
ケムニッツ工科大学院 哲学部大学ではコミュニケーションを専門に学びながら、「どうすれば人の心に届く表現ができるのか?」を考えてきました。記事では、読む人にとって“わかりやすくてタメになる”、そしてほんの少しでも前向きになれるようなコンテンツを目指しています。「食」は誰かにそっと寄り添う力があると信じています。その魅力と可能性を、さまざまな視点から丁寧に発信してまいります。