自宅で飲食店を開業する方法とは?必要な手続きや注意点を解説

自宅で飲食店を開業することは、多くの人にとって魅力的な選択肢です。特に、料理が好きでおもてなしをしたいという方にとって、自宅での開業は夢の実現の一歩となります。しかし、開業にあたっては多くの手続きや準備が必要です。本記事では、自宅で飲食店を開業するために必要な手続きや資格、注意点について詳しく解説します。



自宅で飲食店を開業するのに必要な資格

飲食店を開業する際は、2つの資格を取得する必要があります。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、飲食店で食品の安全と衛生を管理するための資格です。

食品衛生責任者になるためには、次の資格を有する必要があります。

 

①栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者(注1)の有資格者。

② 都道府県知事等が行う食品衛生責任者になるための講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会の受講修了者。

(注1) 医師・獣医師・歯科医師・薬剤師または、学校教育法に基づく大学で、医学・歯学・薬学・獣医学・畜産学・水産学・農芸化学の課程を修めて卒業した者等。

 

上記の①もしくは②の資格を持っている人は食品衛生責任者になれます。それ以外の人は、“養成講習会”を受講しなければなりません。一般社団法人東京都食品衛生協会が、東京都知事の認定を受けて実施しています。講習会の日程や場所は、サイトをご覧ください。

(参考:一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者資格とは」

講習種別

概要

受講時間

受講料

会場集合型

養成講習会

講習会終了時に修了証がもらえる

9:45~16:30

(6時間)

12,000円

eラーニング型

養成講習会

受講修了後、受講基準を満たした方に10営業日以内に修了証が自宅に郵送される

24時間

いつでも受講可能

(6時間)

12,000円

 

防火管理者

防火管理者は、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います。(引用:一般社団法人日本防火・防災協会「防火管理者とは」)収容人数が30人以上の店舗では、防火管理者の選任が義務付けられています。

防火管理者になるためには、講習を受講し、修了証を取得する必要があります。

 

講習は「甲種」と「乙種」の2つに分かれており、受けなければいけない講習は飲食店の用途と面積で変わります。

甲種防火対象物

特定用途

(劇場、集会場、ナイトクラブ他)

非特定用途

(共同住宅、画工、図書館他)

300㎡以上

500㎡以上



乙種防火対象物

特定用途

(劇場、集会場、ナイトクラブ他)

非特定用途

(共同住宅、画工、図書館他)

300㎡未満

500㎡未満



講習種別

概要

講習時間

受講料

甲種防火管理

新規講習

甲種防火管理者として選任されることができる資格を取得するためのもの

おおむね10時間

(2日間)

8,000円

乙種防火管理講習

乙種防火管理者として選任されることができる資格を取得するためのもの

おおむね5時間

(1日間)

7,000円

 

【住居体系別】確認しなければならないこと

マンションで開業する場合

まずは、管理規約で商業利用が認められているかどうか確認しましょう。許可なしに店舗用にリフォームすることが禁止とされているケースもありますので、きちんと確認しましょう。オートロックのマンションの場合は、どうやって顧客を店まで入れるのかも考慮しなければなりません。

一戸建てで開業する場合

自分の住んでいる地域が、都市計画法に基づいて指定される「用途地域」に属するのかどうかも知っておかねばなりません。低層住居専用地域や中高層住居専用地域であれば、規模によってオープン可能です。住居地域や工業地の場合、飲食店の開業はほぼ不可能です。

自宅を店舗にするとなると、住居スペースをどうやって分けるのかというのも考えなければいけないポイントです。

分け方は2パターンあります。

①1階と2階で区分する

一般的なのが、1階と2階できっちり分けるパターンです。空間をしっかり区別できますが、2階の足音が響いてしまう等のトラブルも発生しやすい傾向にあります。

②同じ階で区分する

手前を店舗に、奥を住居にするといった、同じ階で分ける方法もあります。

場合によって間取りを変える必要があるため、工事費がかさむのがデメリットです。しかし、足音などの生活感がなくなるため、店舗の仕上がりは高くなる傾向にあります。

 

自宅で開業するメリット

自宅で開業するメリットについて解説します。

リスクが少ない

物件を新しく借りて開業するわけではないので、店がうまくいかなかった場合にササっと店じまいができるのがメリットです。ただし、リフォームをしている場合には大きな損失になってしまうことがあるため慎重に検討しましょう。

少ない資金で始められる

店舗を借りるとなると多額の費用が必要になりますが、自宅での開業は心配ご無用!今の家が店舗になるため、物件にかかる費用を大幅にカットできます。敷金や礼金もかからないため、固定費が浮きます。

ワークライフバランスを重視できる

自宅が店舗ならば出社・通勤する必要がありません。時間を有効活用できるため、空いた時間で自分のしたいことができるのが大きなメリットです。お子さまや、介護が必要なご家族がいる場合でも、常に様子を伺うことができます。

自宅で開業するデメリット

自宅で開業するデメリットについて解説します。

ご近所トラブルのもとになる場合がある

廃棄になった生ごみから虫が湧いてしまう、住宅街に人の行列ができてしまうなどのトラブルにつながるケースもあります。自宅で開業するとなると、ご近所の理解と協力が必要不可欠になります。ご近所から迷惑がられるようなことになってしまうと、のちのち応援してもらえなくなってしまうことも。

どのように対応するか、事前に対策を考えておきましょう。

仕事とプライベートのメリハリがつかない

自宅で仕事をしていると、オンとオフの切り分けが難しくなります。プライベートを優先してしまったり、自宅ならではの誘惑に負けてしまうこともあるでしょう。自己管理能力が高くなければ難しいかもしれません。

 

まとめ

自宅で飲食店を開業することは、コスト削減や家族との時間の両立など多くのメリットがあります。しかし、開業には食品衛生責任者の資格取得や保健所の営業許可申請など、クリアすべき手続きが多数存在します。また、住宅地での営業には地域の規制を遵守し、近隣住民への配慮が不可欠です。しっかりとしたビジネスプランを立て、自宅での飲食店経営を成功させましょう。