飲食店の開業に必要な準備は?1人での開業は可能?

この記事では、飲食店を開業するという夢を持つ方に向けて、飲食店の開業時に必要な準備と、飲食店を成功させるための秘訣についてお伝えします!また、飲食業界を生き抜く成功のためのポイントも紹介します。入念な計画と準備をすすめ、あなたの夢を実現するための第一歩を踏み出しましょう!

小さい飲食店なら1人でも開業できる?

最近では、新大久保や原宿などにも席数が5~10席ほどしかないこじんまりしたカフェが増えてきています。このような小さな飲食店では、お客様1人1人に丁寧なサービスを提供できるため“アットホームな空間”が生まれ、居心地の良さを感じさせます。店側にとっても、電気代や人件費を安く抑えられるというメリットがあります。

結論として、1人での開業は可能です。ですが、1人で店を回す“ワンオペ営業”は限界があります。店の広さとしては、8~10坪(学校の教室1部屋分ぐらい)、席数は10席程度が良いでしょう。もしも人件費を削減するために1人で営業しようと考えているなら、店の規模をきちんと考慮する必要があります。自分のキャパシティに合った規模でなければ、あたふたした接客になってしまい結果的にお客様の満足度を下げてしまいます。1人1人に良質なサービスを提供したいのであれば、店の規模は慎重に決めるべきです。

飲食店の開業に必要な準備は?

「飲食店を開業したい!と決めたはいいものの、何から始めればよいのか分からない」と悩んでいませんか?この章では、開業するまでに準備することについてお伝えします!

目的に応じて業態を決める

まずは、お店の業態を決めましょう。

「飲食店」と一口に言っても、営業スタイルは1つではありません。席に座ってゆっくり食べる「実店舗」、席は設けず商品だけ提供する「デリバリー・テイクアウト専門店」、キッチンカーであちこちを回って商品を提供する「移動販売」など、業態の種類は様々です。

営業業態によっては、開業にかかる資金を抑えることができます。例えば、「ゴーストキッチン」「キッチンカー」「シェアキッチン」など、物件取得費用や内装工事費のかからない業態の場合、客席を構える実店舗と比べて安く済ませることができます。

 

<資金を抑えられる業態の例>

種類

概要

ゴーストキッチン

バーチャルキッチンとも呼ばれ、客席を構えず、デリバリーやテイクアウトでの販売をおこなう

キッチンカー

店舗を持たずに、調理設備を備えた車両で商品を販売する

シェアキッチン

複数の飲食店が、時間帯を分けて1つの店舗を共同で使用する

 

事業計画を立てる

次に重要なのが、しっかりとした事業計画を立てることです。事業計画は、経営理念、マーケットリサーチ、収支計画、運営スケジュールなどを含みます。特に収支計画は、開業後の資金繰りや経営の安定に直結するため、具体的な数値を定める必要があります。事業計画書は、銀行や投資家からの資金調達の際に必要になるため、慎重に作成しましょう。

5W1Hを使ってコンセプト(テーマ)を決める

<5W1Hとは>

What(何を)

Who(誰に)

Where(どこで)

When(いつ)

Why(なぜ)

How(どのように)

 

店のコンセプトは、「どんな雰囲気の飲食店なのか」「どんなサービスを受けられるのか」をお客様がイメージする材料になります。

コンセプトがしっかりしていれば、開業後に店をアピールする際も、店のイメージを明確に伝えることができます。店の魅力や強みも明確になりますね。

「繁盛させたいから万人受けする飲食店を開こう」と考える人もいるかもしれません。ですが飲食店に限らず、大勢から好かれようとすればするほど特有の魅力はなくなっていきます。そのため「どんな人に、どんなものを届けるのか」をはっきりと定めましょう。ターゲットが限られてしまうと不安になるかもしれませんが、一定の層にズバッと刺さるものは、後に他の層にも広まっていくものです。

物件を探す

飲食店を開業するうえで必要不可欠なのが「物件」です。店舗の立地は、飲食店の成功を大きく左右する要素です。ターゲットとする顧客層が集まりやすい場所を選ぶことが重要です。また、物件の広さや設備、賃料なども考慮しなければなりません。賃貸契約を結ぶ前には、周辺の環境や競合店舗の状況をしっかりとリサーチすることが必要です。飲食店の物件に関する知識がない状態で、1人で物件探しをしようとすると、失敗やトラブルが起こりやすいため、物件紹介サポートをおこなっている会社に依頼するのもおすすめです。

開業資金を調達する

飲食店の開業には多額の資金が必要です。自己資金だけで賄えない場合は、銀行からの融資や政府の助成金、クラウドファンディングなどを活用することができます。資金調達の際には、具体的な資金計画を提示することが求められます。また、返済計画やリスク管理についても十分に考えておく必要があります。

(参考:日本政策金融公庫「新規開業資金」

 

資格を取得する

飲食店を開業するうえで「資格」も必要です。取得が必須なものとそうでないものがあるため、自分が開業したい飲食店に必要な資格が何なのか、確認しましょう。

食品衛生責任者

飲食店を開業したい人が全員取得しなければならない資格が「食品衛生責任者」です。調理師や栄養士の免許を持っていれば、自動的に「食品衛生責任者」になれます。持っていない場合は、各都道府県の食品衛生協会が開催する「食品衛生責任者養成講習会」を受講する必要があります。

<食品衛生責任者養講習会について>

受講期間:1日

費用:10,000円

内容:衛生法規(2時間)、公衆衛生学(1時間)、食品衛生学(3時間)

詳しくは、最寄りの食品衛生協会または最寄りの保健所へお問い合わせください。

(参考:公益社団法人 日本食品衛生協会「全国の食品衛生協会」)

防火管理者

開業したい飲食店の収容人数(従業員+席数)が30名以上の場合、「防火管理者」の資格が必要です。この資格は、一般財団法人日本防火・防災協会が開催する講習会に参加することで取得できます。受講する講習会は、開業したい飲食店の延床面積によって異なります。

<防火管理者講習会について>

店舗の延床面積が300㎡以上:甲種講習(2日、10時間)

店舗の延床面積が300㎡以下:乙種講習(1日、5時間)

申し込み方法や開催日時については、一般財団法人日本防火・防災協会のホームページにてご確認ください。

参考:一般財団法人日本防火・防災協会「防火・防災管理講習」

 

調理師免許がなくても開業できる

飲食店を開業するうえで「調理師免許」が必要なのでは…?と考える人が多いですが、実際はなくても問題ありません。

調理師として厨房で働くために必要な資格であり、開業に必須な資格ではありません。

とはいえ、調理師免許を持っていると食品衛生責任者の資格をとる必要がないので、持っているに越したことはない資格です。

届出を申請する

飲食店を開業するには、いくつかの届出や許可申請が必要です。

飲食店の開業に必要な届出

書類名

期限

提出先

概要

個人事業の開廃業等届出書

開業後1カ月以内

管轄の税務署

(参考:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

個人事業税の事業開始等申告書

開業後1カ月以内

都道府県地方税務署

・事業の開始、変更、事業所の設立、廃業時に、個人が知事に対して提出する

・個人事業主の場合、地方税である個人事業税も課税される。そのため、都道府県税事務所への届出が必要

(参考:東京都主税局「個人事業税申請様式」

所得税の青色申告承認申請書

青色申告の承認を受けようとする年の3月15日

管轄の税務署

・青色申告をおこなう承認を受けるための申請書

・「赤字繰り越し」「税務上の優遇措置」「減価償却費の計上」等のメリットがある

(参考:国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申告書

適用を受けるとき

管轄の税務署

・給与から天引きした源泉所得税の納付を年2回まとめておこなうための書類

(参考:国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」

青色事業専従者給与に関する届出書

・青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで

・上記と同年の1月16日以後に、開業者や新たな専従者がいることになった場合は、いることになった日から2か月以内

管轄の税務署

・家族等の事業従事者に給与を支払う場合、給与を経費に算入するために必要になる


(参考:国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」

飲食店営業許可

店舗完成の10日前まで

管轄の保健所

飲食店の衛生面を保証するもの。申請書の他、配置図(見取り図)、食品衛生責任者の資格証明書、申請料が必要。

(参考:東京都福祉保険局「営業開始後に必要な手続き」

防火管理者選任届

営業開始まで

(防火管理者講習を受講後、速やかに提出するのが望ましい)

消防署

・店舗の収容人数(従業員+席数)が30人を超える場合に提出が必要

・講習終了後に交付される修了証を提出

(参考:東京消防庁「防火管理者選任届」

新築、用途変更、一時使用等届出

使用開始の7日前まで

管轄の消防庁

・建物やその一部を改修する場合に必要

(参考:東京消防庁「新築、用途変更、一時使用等届出」

火を使用する設備等の設置届

設備設置前

管轄の消防署

・消防署が必要とする防火措置がこう知られているか確認するために必要

(参考:東京消防庁「設備の設置・設備業届出」

 

営業内容によって必要な届出

飲食店の種類によって追加の届出が必要な場合があるので注意してください。

 

書類名

期限

提出先

概要

深夜酒類提供飲食店営業開始届出書

営業開始日の10日前まで

管轄の警察署

・深夜0時~6時に酒類をメインに提供する場合に必要

・食事を主な営業内容とする場合は提出不要

(参考:警視庁「深夜酒類提供飲食店営業様式一覧」

風俗営業許可申請

営業開始日の2か月前まで

管轄の警察署

・顧客に接待をおこなう場合に必要

・風俗営業をおこなう場合、深夜0時以降の酒類提供が禁止。

(参考:警視庁「風俗営業許可申請」

酒類小売業免許等の申請

酒類の販売をおこうなう前

管轄の税務署

・酒類を「持ち帰り用」として販売する場合に必要

(参考:国税庁「酒類の販売業免許の申請」

麺製造業許可申請

営業開始日の2週間前まで

管轄の保健所

・飲食店で自家製の乾麺・生麺を販売する場合に必要

(参考:東京都保険医療局「食品関係営業許可申請の手引」

食品の冷凍又は冷蔵業許可申請

営業開始日の2週間前まで

管轄の保健所

・冷凍食品の製造販売又は魚介類を冷凍・冷蔵販売する場合に必要

(参考:東京都保険医療局「食品関係営業許可申請の手引」

菓子製造許可申請

営業開始日の15日前まで

管轄の保健所

・店頭で、店舗内で製造した菓子を販売する場合に必要

(参考:東京都保険医療局「食品関係営業許可申請の手引」

 

従業員を雇う場合に必要な届出

従業員を雇用する場合は、加入しなければならない保険があります。

 

書類名

期限

提出先

概要

給与支払事務所等の開設届出書

従業員を雇用してから1カ月以内

管轄の税務署

・従業員の雇用及び給与を支払う場合に必要

・源泉所得税の納付書を送付してもらうための届出

・個人営業の場合は提出不要

(参考:国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」

労災保険加入手続き

雇用した日の翌日から10日以内

労働基準監督署

・個人営業/法人ともに、従業員の「一週間の所定労働時間が20時間以上」の場合、アルバイトであっても提出が必要

(参考:厚生労働省「労働保険について」

雇用保険の加入手続き

公共職業安定所

雇用した日の翌日から10日以内

・個人営業/法人ともに、従業員の「一週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上継続して雇用する」場合に必要

・原則学生アルバイトは不要

(参考:厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」

社会保険加入手続き

管轄の年金事務所

明確な期限なし(開業後速やかに提出すること)

・法人は必ず加入しなければならない

・個人事業主の場合は、飲食店は法定外業種のため加入が任意になる

(参考:日本年金機構「事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」



メニューを開発する

新規メニューの開発も、開業をするうえで見逃せない準備項目です。あなたの飲食店のターゲットが、どんな料理を求めているのか、ニーズを推測しましょう。食材費を増やせば豪華な料理を作ることができますが、この場合お客様への提供金額が上がってしまいます。理想の提供金額から逆算し、使える食材費を決めましょう。決められた食材費からいかに美味しい料理を作れるかが腕の見せ所になるでしょう。

開業後も、メニューの開発は必須です。他店がどんなメニューを出しているのか研究し続ける必要があるといえます。

飲食店の開業を成功させる秘訣

飲食店経営は難易度が高く、オープンしてから3年以内の廃業率は70%と言われています。(引用:M&A総合研究所飲食店の廃業実態

競争が激しく廃れも早いため、身体的にも精神的にもハードな業界です。ですが、お客様が商品を食べて喜ぶ姿を見れたり、「美味しい」という言葉を聞けたり、お客様の反応を間近に感じられるのは飲食業界の最大の魅力です。厳しい世界で生き残るためには、開業前からしっかり事業計画を立て、店の軸を固めることが重要です。

 

コストを意識する

開業してからは、材料費や人件費などのコスト管理を徹底しましょう。個人で管理する場合は適当になってしまいがちですが、それがのちのち廃業を招きます。ギリギリの自転車操業になってしまうと、思わぬ出費がかさんだ場合に対処できなくなります。飲食店を存続させるには、経済的余力がマストです。そのためにも、具体的な数値を踏まえた事業計画を練りましょう。

マーケティング力を身につける

飲食店が廃業する理由の1つに「計画・戦力不足」が挙げられます。開業前には精密なマーケティングリサーチが必要にもかかわらず、なんとなくのイメージで開業してしまうケースが少なくありません。

 

客のニーズを掴む

「お客様が求めているサービスは何か」を常に考え、満足度向上に繋がるような策を講じる必要があります。開業時は、店のコンセプトやメニューの豊富さ、オペレーションの効率化ばかりに気を取られず、お客様のニーズと店が提供したいサービスのギャップを埋めるように意識しましょう。お客様があってこそ飲食店を続けられるため、自分好みにこだわりすぎてお客様のニーズを無視しないよう注意が必要です。

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まとめ

飲食店の開業準備はたくさんあって大変だと感じるかもしれませんが、焦らず1つ1つ着実にこなすことが大切です。書類の申請や資格取得などはどれも締め切りが決められており時間との勝負でもあるため、余裕をもって計画的にすすめましょう。