2025/04/11
「N1は通過点。大切なのは実践力」―店長代理チャンさんが語る6年間の成長ストーリー

飲食業界における人材不足が深刻化する中、特定技能ビザを活用した外国人材の雇用に注目が集まっています。しかし、「実際にどんな人たちが働いているのか?」「本当に戦力になるのか?」と不安に感じる経営者も少なくありません。
今回は、特定技能ビザで日本の飲食店に勤務し、現在は店長代理として活躍するベトナム出身のチャンさんにインタビュー。ストイックな学びの姿勢と、現場で培った実践力について語っていただきました。
日本を選んだ理由を教えてください!
ベトナムでドラえもんを見ていて、日本語の発音の柔らかさとリズムに惹かれたのがきっかけです。元々外国語を学ぶこと自体が好きで、自分が話したことのない言語の中でも特に心地よかったのが日本語なんです。
来日してから今までの日本でのキャリアを教えてください!
ベトナムから日本に来て6年目になります。最初は技能実習生として自動車の部品加工工場で働いていました。その後、特定技能ビザに変わり、介護職を経て現在に至ります。料理が特技であることを生かせる飲食業求人をインターネットで調べていたら出会い、「ここで働きたい」と思い応募しました。働きながら日本語も十分に勉強できる仕事=接客=飲食業、と考え、飲食業への転職を決意しました。最初は「うまくやっていけるかな」「失敗したらどうしよう」と不安やプレッシャーで心が押しつぶされそうでしたが、今では自分の仕事に自信と誇りを持っています。
日本語能力試験N1を取得していると伺いましたが…
日本語能力はN1以上だと褒めていただけることが多いのですが、N1に合格しているかどうか定かではありません。というのも実は、合格通知は開封しないんです。現状に満足するのが嫌なので、毎年受験し、力が衰えないように勉強を続けています。
実際に重要なのは日本語能力試験N1に合格することではなく、実際に日本人の方を目の前にしてどれだけ話ができるかではないでしょうか?N1を持っていても日本語をうまく話せないケースもあるので、試験はあくまで「読む」「書く」のスキルを測るもので、より力を入れて磨くべきなのは「会話力」だと考えています!
フォロワー3.8万人の語学系TikTokerというのは本当ですか!?
TikTokerというと大袈裟です!(苦笑)…が、本当です。飲食業の仕事で、頻繁に使うお客様への接客フレーズや、自分自身の体調不良を伝える時の言い方など、仕事から生活まで幅広い日本語を実体験に基づいてシェアしています。私が上から目線で教えたいわけではなく、日本で働いている私と同じような境遇の人のお役に立てればいいな…という思いから、私が学んだことをシェアするようになりました。(※実際のTikTokはこちら!)
働いていてやりがいや充実感を感じる瞬間は?
どのようにお客様に接すればリピーターになってもらえるか、を考えながら接客することです。話すスピードや言葉遣いに注意し、お客様が何か欲しそうにソワソワしているのを一瞬たりとも見逃さずに対応することにやりがいを感じます。忙しくて余裕がなくなりがちな時こそ、1つ1つの業務に丁寧に取り組むことを意識し、1人でも多くのお客様が再来店してくださるようにという気持ちを込めて接客しています。北千住店の仲間は皆優しく、皆のおかげで仕事にやりがいを見出せるようになったと言っても過言ではありません。仲間と共に働くことも、とても楽しいです。
お客様への接客の中で学んだ日本語はありますか?
最近の話なんですが、お客様がお弁当をテイクアウトしてくださり、出来上がるまで店内でお待ちいただこうと思ったのですがあいにく満席でした、私が「良ければ店頭でお待ちしていただけないでしょうか」と伝えたところ、お客様から「良ければ」ではなく「お手数ですが」の方がもっと丁寧な接客になるよと教えてくださいました。お客様から日本語を教えていただけるのは、とても嬉しくて私にとって最高の環境です。指摘されることがないように、今は謙譲語や尊敬語の勉強をしています。
店長代理に昇格して、仕事内容に変化はありましたか?
業務面では、発注作業が加わりました。業務よりも、心理的な変化が大きいと感じています。今まで分からないこと・困ったことがあったら、対応は店長にお任せしていましたが、今は私以外のスタッフの責任も、私について回ってきます。仕事への責任感がより一層、強くなりました。
今後の目標を教えていただけますか?
大好きな日本でもっと生活したいので、まずは特定技能2号を取得することが目標です。店長代理にもなって仕事に責任感が芽生えているので、店長代理と呼ばれるのに相応しい人でありたいと思っています。将来的には、店長やエリアマネージャーなどさらに上のポジションを目指したいですが、今は目の前の小さな目標をコツコツクリアして、確実に成長していくことが目標です。
これまでお会いしてきた中でも飛び抜けて日本語がお上手なチャンさん。店長代理という役職に上り詰めるまでのキャリアや、実際の接客エピソードを聞くことができて私も勉強になりました。今回のチャンさんのインタビューを通じて、特定技能人材の“即戦力”としての可能性を強く感じました。言葉の壁を乗り越え、自ら成長を続けるその姿勢は、まさに飲食店に求められる人材像そのものではないでしょうか。このインタビュー記事が、採用に悩む経営者の方々にとって、新たな視点を得るきっかけとなれば幸いです。

